窩洞形成時の姿勢の解析(第486回 大阪歯科学会例会 抄録)
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概要
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水平位診療は,立位診療と比べて術者と患者の両者の負担が少な<,術者の手指の高度な制御をよリ容易にするとされ主流となってきた.診療姿勢については,古くからさまざまな検討が行われておリ,立位や椅坐位での診療における疲労や負担の計測がなされてきた.演者らはこれまでに,身体への負担が少ない理想的な作業姿勢の計測や診療姿勢が腰部への筋疲労に及ばす影響の分析を行っておリ,上体が前傾すると腰部への身体的負担が大きくなるという知見を得た.今回,水平位診療において,腰部への身体的負担が少なくなる条件を明らかにするために,歯科医師101名を対象に窩洞形成中の姿勢を計測し,その傾向について分析した.方法:被験者は,日常的に水平位で診療を行っている歯科医師101名とした.実習用マネキン(ファントムJP-88,ニッシン)にエポキシ樹脂製人工歯(A 1-500,二ッシン)を装着し,被験者に,エアタービンハンドピース(ASTRONα2 SAT-C-O,モリタ製作所)およびダイヤモンドインスツルメント(FG#401,松風)を用いて,上顎左右第一大臼歯遠心隣接面側室窩洞および上顎左側中切歯近心3級窩洞を彫成するよう指示した.窩洞形成時のチェアーおよびスツール(CHAIR UNIT CU-580,モリタ製作所)の高さは,最高位においた状態から,被験者の主観に従い,日常的でかつ窩洞形成しやすいと感じる姿勢になるように白身で調節させた.被験者が窩洞形成中に最も長くとり続けた姿勢について,座面,作業点および眉間の高さを計測し助手の有無,ミラーの使用の有無,作業位置を記録した.また,被験者の座高,頭頂から眉間までの距離,腰骨頭点の高さを計測し,診療経験年数,性別を記録した.計測は室内照度500〜900 Lux, 室温25土1℃の環境下で,午前11時から午後3時の間に行い,被験者に診療可能な服,規定の靴を着用させた.結果および考察:上体の前傾の程度と作業点の高さには有意な相関(p<0.001)が認められ,作業点が高くなるほど,上体の前傾の程度は小さくなった.とくに,上顎左右第一大臼歯窩洞形成時について,作業位置が12時の位置のときミラーを使用している被験者は,上体の前傾の程度が小さかった.座面の高さと上体の前傾の程度との間および座面の高さと作業点の高さとの間に,相関は認められなかった.診療経験年数および性別,助手の有無と座面の高さおよび上体の前傾の程度,作業点の高さ,作業位置について相関は認められなかった.作業点を高くし,12時の位置で作業することで上体の前傾の程度は小さい値を示したことから,作業点を高くすると,術者は腰に負担の少ない姿勢で窩洞形成が行えることが示唆された.
- 2003-03-25