ラット歯周組織欠損の早期治癒に及ぼすエナメルマトリックスデリバティブ(EMD)の影響
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概要
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エナメルママトリックスデリバティブ(EMD)は,残存歯根膜組織中の幹細胞に働きかけて歯周組織の再生を導くと考えられ,in vitroにおける研究で,その作用が解明されつつある.しかし,EMDのin vitroでの作用がin vivoで再現されるかどうかは明らかでない.そこで本研究では,ラット臼歯に外科的に作製した歯周組織欠損に対して,EMDの塗布が歯と歯肉の付着部の早期治癒にどのような影響を及ぼすかを明らかにするため,光顕的および電顕的に検討した.実験動物にはラット50匹を用い,上顎両側第一臼歯の口蓋側に全層弁を形成後,ラウンドバーを用いて歯槽骨,歯根膜および歯根表面を削除した.その後,ラットの両側の削除根面にエムドゲイン[○!R]を塗布,それをEMD群とし,両側の削除根面に何ら塗布しなかったラットを対照群とした.実験期間は1, 3, 5、7および14日とした.期間経週後,被験歯根を含む周囲組織を一塊として採取,脱灰したのち,右側の試料は通法に従いパラフィン包埋, H-E染色を行って光頭的に観察した.なお,EMD群14日の試料については,TRAP染色も行った.一方,左側の試料は型通リにエポン包埋,準超薄切片を作製してH-E染色と対比した.続いて超薄切片を作製,透過型電顕にて観察した.その結果,EMDは,術後1日の歯周顕織損傷部で,わずかに好酸性の不定形の塊,あるいはフィプリンと混在した微好酸性の網目状構造物として認められた. EMD周囲には著しい好中球の集簇がみられた. EMD群の術後3日では,好中球に代わって多<のマクロファージが浸潤し,EMDを活発に貪食しているのが観察された.これと同時に,マクロファージ周囲には線維芽細胞の出現が多数みられた.術後7,14日の根面付近では,対照群と比較して,多くのマクロファージと線維芽細胞の混在が認められた.また,今回観察した術後14日の全試料で,削除根面に接してTRAP陽性の多様巨細胞が認められ,それによる活発な根吸収が観察された,これらのことから,EMD塗布根面では,治癒早期にマクロファージが多く浸潤し,線維芽細胞の増殖や破歯細胞の出現に重要な役割を果たしているものと考えられた.
- 大阪歯科学会の論文
- 2003-03-25
著者
-
今井 久夫
大阪歯科大学歯周病学講座
-
野口 吉廣
大阪歯科大学 歯周病学講座
-
今井 久夫
大阪歯科大学
-
福永 剛士
大阪歯科大学歯周病学講座
-
福永 剛士
大阪歯科大学大学院歯学研究科
-
今井 久夫
大阪歯科大学 歯周病学講座
-
野口 吉広
大阪歯科大学 大学院
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