アポトーシスの誘導からみたビスフェノールAの生物学的評価(in vitro)
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概要
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緒言歯科用高分子材料の原料の1つであるBisphenol-A(BPA)の内分泌撹乱作用が疑われている.一般的に化学物質の生物学的影響は,複雑な過程を経ると考えられている.BPAについての培養細胞を用いたエストロゲン様活性報告に比較して,生物反応の種々の局面で重要な役割を担っているとされるアポトーシス(細胞死)の面からの評価は未だ数少ない.本研究はその点に着目し,BPAの生物学的影響について,アポトーシスの誘導とエストロゲン様活性という異なった径路からの影響を分析し,BPAのin vitroにおける生物学的評価を行った.材料および方法BPAに加えて,17beta-estradiol(E_2),また歯科材料成分としてmethyl methacrylate(MMA)を比較用とした.DMSOに溶解した後,チャコール処理FBS添加培養液にて希釈し,BPAは1×10^-12M〜1×10^-4M,E_2は1×10^-14M〜1×10^-6M,MMAは1×10^-14M〜1×10^-4Mのそれぞれ最終濃度範囲で試験液を作製した.エストロゲン感受性ヒト乳癌細胞株MCF-7細胞を用い,6日間にわたってアポトーシスの誘導測定にはフローサイトメトリーを用いた細胞膜変化の測定試験,電気泳動法を用いたDNA断片化の測定試験,Caspase-3およびCaspase-6の活性測定試験を,エストロゲン様活性測定にはE-screen試験をそれぞれ行った.結果アポトーシスの誘導による細胞膜変化の測定では1日目では全く認められなかった.しかし3日目以降,BPAの1×10^-8M〜1×10^-5M,E_2の1×10^-12M〜1×10^-6M,MMAの1×10^-8M〜1×10^-4Mでアポトーシスの誘導が認められ,6日目では同濃度範囲でアポトーシスの誘導増加と共にネクローシスの誘導増加が認められた.DNA断片化の測定では,3試料とも1日目,3日目でほとんど認められなかったが,6日目にはBPAの1×10^-11M〜1×10^-5M,E_2の1×10^-12M〜1×10^-6M,MMAの1×10^-9M〜1×10^-4Mで断片化がおこりアポトーシスの誘導が認められた.Caspase-3およびCaspase-6の活性測定では,1日目には3試料ともほとんど活性が認められなかった.しかし3日目,6日目ともにBPAの1×10^-8M〜1×10^-5M,E_2の1×10^-11M〜1×10^-6MでCaspase-3およびCaspase-6の活性が増加した.MMAでは3日目にCaspase-3の1×10^-14M〜1×10^-4Mで活性は増加しなかったが,6日目に1×10^-10M〜1×10^-4Mで,Caspase-6の3日目,6日目ともに1×10^-9M〜1×10^-4Mで活性が増加し,アポトーシスの誘導が認められた.エストロゲン様活性測定では,BPAの1×10^-7M〜1×10^-5M,E_2の1×10^-13M〜1×10^-7Mで3日目から活性が認められ,6日目にかけてさらに増加が認められた。MMAでは3日目,6日目ともに全く活性が認められなかった.これらの結果から,BPAがエストロゲンレセプターに結合し過剰な細胞増殖を促進する一方で,他の径路ではアポトーシスの誘導を助長することがわかった.すなわち,アポトーシスの誘導と細胞増殖を比較することによって,BPAの生物学的影響を多面的に調べる道が開けたといえる.今後,他の歯科材料の生物学的影響を評価する際に,アポトーシスによるプログラム化された細胞死も考慮に入れ,判断していく必要性の高いことが示唆された.
- 2002-06-25
論文 | ランダム
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