茎状突起の画像診断に関する研究
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概要
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茎状突起の異常が咽喉頭を中心に頭頸部全体に疼痛や違和感などの多彩な症状を引き起こすことは以前から知られている.この突起は頭蓋底骨から棘状に前内下方にのびる突起で,X線診断において他の顔面・頭蓋骨と重複し診断に苦慮することが多い.そこで,わたしは茎状突起の正常,異常を簡潔に画像診断する方法を模索・確立するために本研究を行った.1991年から2001年に大阪歯科大学耳鼻咽喉科を受診し,回転方式パノラマX線写真と頭部単純X線写真を撮影した429名を対象とした.対象を三群に分けて,回転方式パノラマX線写真上で茎状突起を観察し,突起長や前方角度を計測した.グループI,389例はコントロール群で,歯の疾患および副鼻腔疾患症例.グループII,36例は咽喉頭異常感を訴える症例。グループIIIは過長茎状突起症と診断され手術が必要と判定された4例である.突起長は,グループIでは平均30.08±4.69mm,グループIIでは平均40.50±5.61mmであった。グループIに比較してグループIIでは危険率5%以下で有意に長かった。男女間,左右間に有意差はなく,年齢と突起の長さとの間に有意な相関関係はなかった.前方角度は,I群では平均67。65±5.41°,II群では平均65.20±5.40°であった.各群間,男女間,左右間に有意差はなく,年齢と前方角度には相関関係を認めなかった.CT三次元構築像からの茎状突起計測結果と,回転方式パノラマX線写真を使った計測結果とを比較したが,突起長や前方角度に差はなかった.しかし,回転方式パノラマX線写真からは内方角を知ることはできなかった.計測結果より,回転方式パノラマX線写真において茎状突起の先端が下顎枝後縁の1/2より上後方にある場合には茎状突起に過長は無いと判定し,下顎枝後縁の下1/4より下前方にある場合には過長であると判定することができると考察した.茎状突起の観察には回転方式パノラマX線写真が有用で,ルーチン検査に加えることに意義があると考えられた.
- 2002-06-25