顎骨骨膜下膿瘍から分離した細菌の粘性物質産生性
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概要
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歯性感染症の中でも重篤な顎骨骨頷下膿瘍を対象に,分離細菌の固定と粘性物質産生性を検討した.分離細菌は偏性嫌気性菌が優勢であった.しかし,粘性物質産生性は通性嫌気性菌が偏性嫌気性菌に比べて有意に高い値を示した.粘度測定の結果,通性嫌気性グラム陽性球菌では平均3.06mPa・sの粘度を示し,中でもStretococcus oralisは平均3.32mPa・sときわめて高い値を示した.また,粘性物質産生株の分布を詳細に検討した結果, Peptostreptococcus sp., Prevotella intermedia/nigrescens, S. oral is, Fusobacterium nucleatumなどが主な粘性物質産生菌であった.各菌種とも1.40mPa・s から2.00mPa・s付近にその中央値が存在し,粘度が高くなるに従って分布度数が低くなる傾向がみられた.しかし,S. oralisは2.50mPa・sおよび4.00mPa・s付近に分布度数の中心が集中し,分布の2峰性が認められた.また,高い粘性を示した菌株を走査電子顕微鏡で観察したところ,菌体周囲にexopolysaccharideを産生するPrevotella intermedia/nigrescensと類似の網目様構造物がみられた.これらの結果から,歯性感染症から分離される細菌の中に粘性物質産生菌が広範囲に分布していることが確かめられ,S. oralisのような高度粘性産生株がbiofilm形成に深く関与している可能性が示唆される.
- 大阪歯科学会の論文
- 2004-12-25
著者
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