術後性上顎嚢胞に関する臨床的ならびに走査電子顕微鏡的研究
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概要
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術後性上顎嚢胞252例について臨床的ならびに組織学的検索を行い, 歯の関与する嚢胞の発症機序, 潜在性嚢胞の特徴および本症の成因について検討を加え, 以下の結果を得た.1.歯の関与する嚢胞を49例(19.8%)認め, 三型に分類できた.I型を嚢胞内に歯根が露呈するもの(22例)とし, 術後性歯根嚢胞と命名した.嚢胞内に露呈する歯は外見上健全歯でありながら失活歯である所見に注目し, 本嚢胞の成立は上顎洞炎根本手術時の歯根尖端損傷に起因する歯髄壊死から, 根尖周囲炎, 根尖肉芽腫を経て発症すると推論した.2.潜在性嚢胞は96例(45.7%)認められ, 経過観察中に5例が顕性化した.潜在性嚢胞5例について手術を行ったところ, いずれも単房性で4例に内溶液を認めた.嚢胞壁の表面微細構造は5例とも線毛細胞が豊富であった.これらの所見から潜在性嚢胞は顕性嚢胞に発展する可能性があることが示唆された.3.本症の成因を解明するために, 嚢胞数および嚢胞壁の上皮形態について検索した.嚢胞は単房性が145例(68.7%)と多く観察された.嚢胞壁の光顕的検索では24例中23例(95.8%)に上皮組織が認められた.55例62側80嚢胞の走査電子顕微鏡による検索では, 57嚢胞(71.2%)に線毛細胞が認められた.4.これらの成績は再形成洞孤立説を支持する所見である.術後洞は充塞性治癒あるいは腔洞性治癒を理想とするが, 治癒機転が障害され, 術後洞は対孔・自然口の閉鎖により鼻腔と遮断され孤立化することが本症発症の大きな要因と考えられる.再形成洞孤立説は単房性嚢胞の成立には適するが, 多房性嚢胞の成立にはあてはまらない.本症の成立機序をさらに明確にするには, 多房性嚢胞の成立について検索することが今後の課題である.嚢胞壁が線毛細胞で構成されることが多いことから, 分泌物および血液の一部が組織内に閉鎖されて発症するという間隙嚢胞説は否定してよいと考えられる.
- 大阪歯科学会の論文
- 2000-09-25
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