線毛をもたない Prevotella intermediaから分離精製した赤血球凝集因子の性状について
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概要
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口腔感染症のなかでもっとも重篤な口腔感染症から頻繁に分離される Prevotella intermedia (P. intermedia)は, 病原性に関連する5種類以上の加水分解酵素を産生する. また, P. intermedia には同時に病原性と関連の深い, 宿主組織への強い付着性をもつ菌株もみられる. Leungらは形態学的検索から P. intermedia の菌体表層には typeの異なる4種類の線毛がみられ, type C線毛を有する菌株では, 強い赤血球凝集性と上皮細胞への付着性を示すと報告している. また, 最近 Leungらは, type C線毛を有する P. intermedia strain 17から赤血球凝集活性を有する線毛を分離精製し, この線毛が proteaseや80℃, 10分間の加熱に感受性を示し, 精製線毛に対するモノクローナル抗体のFabで凝集阻止されることを明らかにしている. 一方, 藤田らは, 線毛をもたない P. intermedia にも強い赤血球凝集能があることを報告している. また, 村上らは, 線毛をもたない P. intermedia strain E18から赤血球凝集因子を分離し, vesicleを取り囲む amorphousな構造物が赤血球凝集因子であることを示唆している. さらに, 金下らは, この凝集活性を示す amorphousな構造物から Arginine-Sepharose 4Bと Sepharose CL-4Bを用いて約25kDaの赤血球凝集因子を精製している. そこで, 本研究では Leungらが報告している線毛由来の赤血球凝集因子の性状と比較する目的で, 線毛をもたない P. intermedia strain E18から分離精製した赤血球凝集因子の物理化学的性状を検索した. また, 土居らは精製した赤血球凝集因子に対して作製された抗血清が, 精製赤血球凝集因子や P. intermedia strain E18ばかりでなく, type strainである P.intermedia ATCC 25611との間にも共通抗原性を見いだしているので, 赤血球凝集因子の普遍性を検討するために, P. intermediaや Porphyromonas gingivalisをはじめとする黒色色素産生株との間の共通抗原生について検討し, 以下の成績を得た. 本凝集活性因子の残余活性は50℃, 10分間の加熱で50%に, 60℃, 10分間では3.1%に, 70℃, 10分間では完全に消失した. また, trypsin, chymotrypsin, protease および hyaluronidaseで完全に失活し, lysozymeでは3.1%に, β-galactosidaseでは50%に, β-glucosidaseでは12.5%に減少した. 本凝集因子は抗血清で凝集活性は完全に阻止され, galactoseと melibioseで残余活性は50%に減少し, L-arginineと lactoseでは完全に消失した. 本因子は pH7.0〜5.0まで凝集活性に変化は認められなかったが, pH4.5では50%に, pH4.0では25%に, pH3.0では12.5%に, pH2.0では6.3%に減少した. P. intermedia strain E18由来の赤血球凝集因子の普遍性を検討した結果, 多くの P. intermediaと一部の P. nigrescensに本凝集因子と共通抗原性を有する凝集性因子が認められた. また, Porphyromonas gingivalis, Fusobacterium nucleatum, Bacteroides fragilis と同様, P. intermediaや P. nigrescensにも本凝集因子と抗原性が異なる赤血球凝集因子が存在した. Protein A-goldと部分精製した本因子に対する IgGとを用いて本凝集因子の局在性を検討した結果, IgGと反応性が認められない菌株では, gold粒子は菌体表層に認められなかった. 以上の結果から, P. intermedia strain E18由来の赤血球凝集因子は, タンパク-糖の複合体であり, 一部の P. nigrescensを除き, 種特異的であると考えられる.
- 大阪歯科学会の論文
- 1995-08-25
著者
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