黒色色素非産生性 Prevotella intermediaの性状について
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概要
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Provetella intermediaは種々の口腔感染症に関連しており, とくに感染根管由来の感染症からもっとも高頻度にしかも高比率に分離される細菌種である. P. intermedia の type strainである P. intermedia ATCC 25611や常在菌叢および慢性根尖性歯周炎から分離される P. intermediaは, 病原性状に関連する加水分解酵素をわずか1〜2種類しか産生せず, 一般的には Porphyromonas gingivalis に比べて病原性は弱いと考えられている. しかし, 蜂巣炎から分離される P. intermediaは菌株あたり平均で5種類以上の酵素を産生し, マウスを用いた膿瘍形成実験でも P. gingivalisに匹敵する病原性を示すことが明らかにされている. ところで, これらの酵素活性の一部は継代培養によって消失したり減弱したりする. また, 中辻らは粘性物質を産生し, type C線毛を有する P. intermedia strain 17に ethidium bromideを作用させて, 粘性物質産生能や type C線毛を欠失した変異株が得られることおよびこれらの変異株から revertantが分離されないことを示している. さらに, P. intermediaは血液寒天培地上で黒色色素を産生することで他の prevotellaと鑑別されるが, 継代培養を重ねると色素を産生しないコロニーがみられることがある. 著者らは線毛をもたない P. intermedia strain E18に強い赤血球凝集活性を見いだし, その部分精製についてすでに報告している. P. intermedia strain E18の継代培養でもしばしば黒色色素非産生株がみられるので, 本実験では, これらの黒色色素非産生株を分離し, 黒色色素産生株との性状を比較検討し, 以下の成績を得た. P. intermedia strain E18, 3株の黒色色素非産生株(strain E1801, E1802, E1803)および type strainである P. intermedia ATCC 25611は, API ZYM systemでそれぞれ alkaline phosphatase, acid phosphatase, phosphoamidase および α-glucosidase活性を示した. SDS-PAGEによる可溶性タンパク泳動パターンはいずれの菌株とも類似していた. また, P. intermeida strain E18と黒色色素非産生株は菌体表層に線毛構造がみられず, 両者の間に形態学的な相違は認められなかった. 赤血球凝集性は, 対照とした P. intermedia ATCC 25611では8AUであったのに対して, P. intermedia strain E18と黒色色素非産生株はともに32AUであった. 試験したすべての培養菌液と P. intermedia strain E18を硫安分画で濃縮し, ショ糖密度勾配遠心で得た vesicle画分である fraction BとCに対する抗fraction Bおよび 抗fraction C抗血清との間には共通する2本の沈降線が認められた. また, fraction Aを Arginine-agaroseとゲル濾過でさらに精製し, SDS-PAGEで約25kDaのバンドを示す赤血球凝集因子に対する抗血清と各培養菌液とを反応させた場合も共通する1本の沈降線が認められた. P. intermedia strain E18および3株の黒色色素非産生株はいずれもβ-lactamase, DNase, lecithinaseおよび lipaseを産生した. パルスフィールド電気泳動では, P. intermedia strain E18, 黒色色素非産生株とも2,200kbと750kb付近に2本のバンドが認められ, chromosomal DNAに相違は認められなかった. 以上の結果から, 黒色色素非産生株は, P. intermedia strain E18由来の変異株であると考えられる.
- 大阪歯科学会の論文
- 1995-08-25
著者
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