サイクリックボルタンメトリーにおける口腔内細菌(とくに Streptococci)の動態
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概要
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口腔内細菌, とくに齲蝕原性細菌の生物学的性質については, これまでに細菌学あるいは生化学的に研究されているが, 電気化学的測定法による研究はほとんどみられてはいない. そこで, 齲蝕原性細菌の電気化学的特性を解明するために, サイクリックボルタンメトリー(CV法)により検討を行った. 実験材料および方法 全自動分極測定装置(HZ-1A Potentiostats/Galvanostats HA-501A, Arbitray function generators)を用い, sweep-speed: 20mV/sec, sweep-width: -100mV〜+1000mVの条件で, 電流(Ipa)および電位(Epa)を計測した. 被検菌株は齲蝕原性を有する数種類の連鎖球菌, すなわちStreptococcus cricetus HS-6 (S. cricetus HS-6), S. rattus BHT, S. mutans NCTC 10449, S. mutans OMZ 175および S. sobrinus Kl-Rで, 37℃, 24時間, 好気的に前培養し, 0.1molリン酸緩衝食塩水(PBS: pH7.0)中で遠心後, 菌液濃度を1×10^5cells/mlに希釈して用いた. なお, 作用電極にはIn, SnおよびITO, 対極にはPt, 参照電極には Ag/AgClをそれぞれ使用した. また, 電気化学的特性測定前の菌体の形態は, 通法にもとつき試料を作製し, 透過型電子顕微鏡(TEM)にて, さらに測定後の電極(作用電極: In, SnおよびITOの各電極)表面への細菌の吸着状態は, 走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した. 結果および考察 Inおよび ITOの両電極においては, いずれの菌でも Ipa の peakが認められた. Ipaの値(pH: 7.0)は, S. sobrinus Kl-Rが3.00μAと最も高い値を示し, ついで S. rattus BHTおよび S. cricetus HS-6(それぞれ, 2.20μAおよび 2.10μA)の順に低く, S. mutans NCTC 10449および S. mutans OMZ 175では最も低い値(0.50μA)を示した. また, これら IPaの変化は, CV法における電流-電位曲線から得られた分析値より, 細菌の細胞内に存在する CoAにより影響されることがわかった. Epaについては, S. sobrinus Kl-Rが 0.90Vで最も高く, 他の4菌株ではほぼ同じ値(0.5〜0.6V)を示した. さらに, 各pHのPBSにおける各菌株および CoA の Ipaは, pHが高くなるに従って, 大きくなる傾向がみられた. これに対して, S. sobrinus Kl-R 以外の名菌株および CoAの Epaは, PBSのpH値が高くなるにつれて, 低下傾向を示した. また, 電流-電位曲線での電位走査回数が増加すると, どの菌株でも Ipaは低下し, その低下傾向は S. sobrinus Kl-R>S. rattus BHT≧S. cricetus HS-6>S. mutans OMZ 175=S. mutans NCTC 10449≧CoAであった. しかし, Epaについては, どの菌株においても, 電位走査回数が増加してもそれに伴う著明な変動は, 認められなかった. そして, IpaおよびEpaの高い S. sobrinus Kl-R のような菌株においては, 電極への吸着量が多くなることが TEMおよび SEMによる観察から確認された. すなわち, 本実験における Ipaおよび Epaの変動は Inを含有した電極に顕著にみられることから, 細菌との電気化学反応は Inに依存していることがわかった. 以上の結果から, 酸化還元反応は菌株によって異なるので, 物質に対する細菌の吸着等をCV法によって判定できることが明らかになった.
- 大阪歯科学会の論文
- 1995-08-25
大阪歯科学会 | 論文
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