連結固定が歯周組織の粘弾性特性に及ぼす影響
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概要
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連結固定が, 歯に及ぼす影響を明らかにしておくことは, 歯を長期に機能させるうえで重要である. しかし, これまで連結固定が生体の健全歯に及ぼす影響を経時的に観察した報告は見あたらない. 健全歯の連結固定で受ける影響が明らかでない限り, 連結固定した場合に生じた変化がなにの要因によるものであるかの判断は難しくなり, 補綴物の設計および予後判定を的確に行えなくなる. そこで本研究では, 健全な歯周組織を有する歯を連結固定した前後について動揺度の変化を観察し, 連結固定が歯周組織の生物力学特性にどのような影響を及ぼすかについて分析を行った. さらに, チタン製エレメントを用いたIMZインプラントと歯の連結固定を行い, 連結固定前後の動揺度変化について観察し, 歯どうしを連結固定した場合との違いを検討した. 実験1として健全な上顎第一小臼歯と隣接する第二小臼歯(3例), 上顎第二小臼歯と隣接する第一大臼歯(2例)について連結固定を行った. 連結固定装置は, 隣接する2歯の頬側および口蓋側の自家製の小型ブラケットと, そのブラケットに適合し頬, 口蓋側両歯面に沿った連結用バーからなり, 咬合関係を変化さぜず, 咀嚼の障害にもならないよう配慮した. ブラケットのみを歯面に接着性セメントで装着し, 連結用バーをスクリューでブラケットに装着することで両隣在歯を連結固定した状態になる. 連結固定開始日を0日として, 連結固定前に1回目の測定を行い, その後直ちに連結用バーをスクリューで装着して連結固定を開始した. 連結固定後1, 2, 3, 7, 10, 14日目に, それ以後は1週間ごとに63日後まで1回目の測定と同じ条件で, すなわち連結用バーを撤去した状態で動揺度自動診断システムを用いて個々の歯の水平的動揺度を測定した. また同時に各ブロックの1歯近心側の歯をコントロール歯として測定した. 次に, 実験2として下顎臼歯部に植立され粘膜貫通部にチタン製エレメントを用いた2本のIMZインプラントと, 1歯近心側の小臼歯とを連結固定する2症例について分析を行った. 連結固定開始約1か月前より被験歯および被験インプラントにクラウンならびに上部構造を仮着し, それぞれを鑞着して製作した連結固定補綴物によって歯とインプラントの連結固定を開始した. 連結固定前後の歯およびインプラントそれぞれの水平的動揺度を動揺度自動診断システムを用いて約2か月間経日的に測定した. 同時に, それぞれ1歯近心側の歯をコントロール歯として同様に測定した. 以上のことから得た結果および考察を以下に示す. 1.連結固定された歯の動揺度の経日変動は, コントロール歯に比べて統計学的に有意に大きく, 連結固定が歯周組織に与える影響を歯の動揺度の変化として捉えることができた. 2.歯と歯を連結固定した場合, 連結固定された歯の経日的な動揺度は連結固定後短期間で大きな増減を示し, 連結固定の影響は連結直固定後の数日間に大きいことがわかった. 3.連結固定された2歯における連結固定前の動揺度の大小関係と, 固定後に変化した動揺度の増減率との間に統計学的に有意な相関関係が認められ, 動揺度の差がある程度大きければ互いの動揺度は近づく傾向にあった. さらに, 連結前に動揺度が小さい歯のほうが, 動揺度が大きくなりその増加率も大きいことが明らかとなり, 動揺度の異なる歯を連結固定してブリッジを製作する場合, 動揺度の小さな歯の動揺度が大きくなることに注意して, 支台歯を選択すべきであることが示唆された. 4.歯とインプラントを連結固定した場合, 動揺度の差が大きいにも関わらず, 歯の動揺度は連結固定前後で有意な減少はみられず, 内部可動性機構を用いないインプラントの歯に対する動揺度の軽減効果は認められなかった.
- 大阪歯科学会の論文
- 1995-04-25