咬頭嵌合位の安定性と下顎変位
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概要
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咬頭嵌合位は習慣性閉口および咀嚼運動の終末位であり, 機能的に最も重要な下顎位と考えられている. 咬頭嵌合位は上下の歯の接触により決まる下顎位であるため, 静的な下顎位にとらえる考えが強く, 咬頭嵌合位の安定性の評価に咬合接触点数, 接触面積および接触歯数に代表されるような量的あるいは形態的な診査に重点が置かれてきたのが現状であった. 一方, 咬頭嵌合位の異常は, 顎口腔系機能に及ぼす影響が大きく, 顎機能異常の発症因子として関連が深いことも報告されている. そこで, 咬みしめ強度の増加に伴う咬合接触状態の変化に加え, 咬みしめ時の微小な下顎の変位を診査し, 咬頭嵌合位の安定性と咬合支持について検討した. 顎口腔系に異常を認めない健常有歯顎者10名および本学附属病院に来院した顎機能異常患者10名を被験者とした. 各被験者の咬頭嵌合位における軽度咬みしめ時および中等度咬みしめ時の咬合接触状態を, add 画像法を用いて診査した. さらに, 各被験者における咬頭嵌合位での咬みしめ強度の増加に伴う切歯点の3次元的移動および左右側の側頭筋前部, 咬筋中央部の筋電位を同時記録した. 切歯点の3次元的移動は, Mandibular Kinesiograph (Myo-tronics, MKG-K6) を用いて記録した. 筋電位導出には, 直径5mmの銀皿表面電極を中心間距離20mmで筋線維の走行に沿って粘着カラーで貼付し, 生体電気アンプにて60dBで差動増幅したのち, データレコーダに記録した. 各信号はサンプリング周波数 2kHz で量子化した. 筋活動状態の分析には, 非対称性指数, 活動性指数およびトルク指数を用いた. 計測は5回行い, その平均値を各被験者の代表値とした. その結果, 以下の知見を得た. 1) 顎機能異常患者は, 咬頭嵌合位での咬みしめ強度の増加に伴い咬合接触位置が変化した. 2) 咬みしめ強度の増加に伴う咬合接触位置の変化は, 下顎の変化によって生じることが明らかとなった. 3) 咬みしめに伴う咬合接触位置の変化が, 片側の臼歯部にみられる場合は, 左右的方向への下顎変位が生じている傾向を認めた. 4) 咬みしめに伴う咬合接触位置の変化が, 両側の臼歯部にみられる場合は, 後方へ大きく下顎変位する傾向を認めた. 5) 咬頭嵌合位の咬合接触の同時均等性の欠落は, 下顎変位のみならず, 閉口筋筋活動の平衡にも影響を及ぼし, とくに咬筋筋活動において著明であった.
- 大阪歯科学会の論文
- 1994-04-25
大阪歯科学会 | 論文
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