Jarabak分析による頭蓋顎顔面の成長発育に関する研究
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概要
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Jarabak分析法は, Bjork分析法を基礎として, これに修正を加え, Tweed分析法, Steiner分析法, Ricketts分析法などを組み合わせたものである. その特徴は, 分析項目と骨格系と歯系に大別し, 骨格系において成長方向を詳しく解析している点である. 顔面表層部に多くの計測点を設定している分析法とは異なり, 顔面深部に計測点を設けているため, 頭蓋顎顔面全体の成長に伴う形態変化を把握できるという長所を有している. そのため, 頭部エックス線規格写真によって小児の顎顔面系の成長変化を追跡する分析法としては最適のものと考えられる. しかしながら, 現在のところ, この分析法における日本人の基礎的データがほとんど発表されていないために, 小児歯科の領域に十分応用できないのが現状である. そこで, 本研究では, このJarabak分析法における各計測項目の経年的なデータを求めると同時に, この分析法の骨格系の計測項目を分析することにより, 小児から成人へと成長する際の頭蓋顎顔面の変化について調査した. 調査に用いた資料は, 上下顎第一大臼歯の咬合関係がI級と判断した男子15名, 女子14名における10歳から15歳までの6年間にわたり経年的に撮影した側貌頭部エックス線規格写真174枚である. 側方頭部エックス線規格写真のトレースならびに各計測項目の角度計測および距離計測は, それらの誤差をできるだけ少なくするため, すべて同一人によって行った. 骨格に関する22の計測項目, 歯に関する計測項目9の計31項目について計測し, その測定値ならびに標準偏差を算出した. ついで各計測項目における成長による変化を知るために, 年間成長量を求めた. また, 10歳とそれ以後の年齢における各計測項目の平均値の差について検定を行った.平均値の差の検定は, 比較する2群間の母分散に関して, 等分散性の検定を行い, 等分散と仮定できた場合はStudentのt検定を, 等分散の仮説が棄却された場合はWelchの方法によって検定を行った. さらに, 成長に伴って起こる頭蓋顎顔面の変化の関連性を調べるために, 骨格系の22の計測項目について成長変化に対する相関係数を求めた. 成長変化の相関を求めるにあたって, 各計測値の数値を10歳時の数値から減じて求めた成長量と, 10歳時の数値で除して求めた成長比の二つの変数を説明変数として用いた. この二つの説明変数より各計測項目間の相関係数を求め, 相関係数行列を作成した. この相関係数に対して無相関の検定を行い, どちらかに有意で, かつかなりの相関関係を有すると考えられる計測項目を抽出した. また, Posterior face heightとAnterior face heightの比についてその経年的変化量を分析して, 顔面の成長方向を調査した. その結果, 1. 10歳から15歳までの日本人のJarabak分析各計測項目における平均値および年間成長量を求めることができた. 2. 本研究により得られた日本人の資料による顔面の成長パターンは, 前下方への成長を示すJarabakのいうstraight downward typeではなく, わずかではあるがcounterclockwise growth typeの成長パターンを示す傾向があることがわかった. これらのデータは, 小児歯科臨床において頭蓋顎顔面の成長を考慮した咬合誘導を行う際に, 重要な参考資料になると考える.
- 大阪歯科学会の論文
- 1993-04-25
著者
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