中脳中心灰白質刺激による視床髄板内核侵害受容ニューロン活動の抑制について
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概要
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下行性および上行性の疼痛抑制系のうち, 上行性抑制系の存在は, ネコの中脳中心灰白質(periaqueductal gray, 以後PAGと略す.)あるいは中脳水道直下の正中線上にあって中心灰白質に取り囲まれた背側縫線核(nucleus raphe dorsalis, 以後NRDと略す.)を電気刺激すると, 視床における外側系痛覚伝導路の中継核である後外側腹側核被殻領域の侵害受容ニューロン活動が抑制されることによって確かめられている. そこで, 視床における内側系痛覚伝導路の中継核である髄板内核, すなわち外側中心核および束傍核のニューロン活動に対するPAGあるいはNRD電気刺激による影響を調ベ, 上行性疼痛抑制系に関する視床での内側系と外側系との痛覚情報伝達制御の相違を明らかにして, 視床レベルでの痛覚情報伝達の機能的意義について解明した. 実験にはウレタン・クロラローズで麻酔したネコを用いた. また, 視床単一二ューロン活動の細胞外導出には, 2% pontamine sky blueを加えた0.5M酢酸ナトリウム溶液を充填したガラス毛細管微小電極を使用した. PAGあるいはNRDに刺激用同芯針電極を刺入し, 条件電気刺激を加えて, 大内臓神経, 大後頭神経(第2頸神経背側枝)および犬歯歯髄への試験刺激に対する髄板内核侵害受容ニューロンの反応の変化を調べ, ざらに中脳網様体電気刺激に対する短潜時スパイク発射への条件電気刺激による影響について検討した. そして, ニューロン活動の記録部位に色素を電気泳動的に注入し, また脳の刺激部位にも通電して鉄イオンを沈着させ, 脳を灌流固定したのち,記録部位および刺激部位を組織学的に同定した. 得られた結果は, 以下のとおりである. PAGあるいはNRDを条件電気刺激を加えると, 検出された髄板内核侵害受容ニューロンの21%において, 試験刺激に対する反応が抑制された. しかし, 検出されたニューロンの17%では, 条件刺激によってスパイク発射の増加が認められ, 他のニューロンは条件刺激の影響を受けなかった. また, 末梢神経刺激に対する反応が条件刺激によって抑制されたニューロンにおいて, 中脳網様体試験刺激に対する短潜時のスパイク発射も中脳条件刺激によって抑制されたので, 髄板内核に作用する上行性疼痛抑制系の存在が示唆された. しかし,その抑制効果は後外側腹側核におけるものよりも小さかった. したがって, PAGあるいはNRDへの電気刺激が, 主として感覚の系である外側系を抑制することが判明した. さらに,条件刺激によって髄板内核侵害受容ニューロンの一部に興奮が認められたが, この興奮は大脳辺縁系に送られて不快感をもたらすものであると考えられる. 同一個体の同一部位に条件刺激を加えた場合にも, 抑制が認められるニューロンと認められないものとがある. したがって, 同一部位での刺激効果はニューロンによって異なることもわかった.
- 大阪歯科学会の論文
- 1993-04-25
大阪歯科学会 | 論文
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