歯周組織由来細胞の移動能および移動細胞の異なった処置根面に対する付着について
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概要
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歯肉剥離掻爬手術後の創傷部では, 細胞の根面への移動, 付着, そして分裂増殖といった一連の生物学的事象がなされている. この後, しかるべき付着様式が決定されるが, この付着決定には, 根面に集積する細胞のフェノタイプが少なからず関与する. このような背景から, 近年, 歯周組織各細胞の有する細胞特性が種々調べられているが, 歯周組織各細胞の移動能を比較した報告はみられない. そこで今回, 歯根膜由来, 歯槽骨由来および歯肉結合組織由来細胞の移動性を比較するため, コラーゲンゲルを用いて各種培養細胞の三次元培養を行った. 加えて, 術後の付着様式決定には, 根面性状が多大な影響を及ぼすことからコラーゲンゲル内を移動した細胞とセメント質, 象牙質との付着様式についても超微構造学的に検索を行った. 実験に使用した培養細胞は, サルの歯周組織から貼り付け法により分離, 獲得した. まず, タイプIコラーゲン混合溶液を24multi-well plateの各wellに分注, ゲル化した. そして, ゲル内細胞侵入試験は, ゲル上に各細胞を播種し, 1, 3および7日間培養して行った. その後, 各wellのコラーゲンゲルを固定, エポン包埋した. 包埋した各試料から1μm厚切片を作製, 光顕下で, ゲル内に侵入した核を有する細胞数とゲル表面からゲル内侵入細胞の細胞突起先端までの最長距離を測定した. ついで, サル抜去歯からセメント質表層一層掻爬根片と象牙質根片を作製した. 各歯根片を24multi-well plateの各wellに置き, その上からコラーゲン混合溶液を分注, 歯根片上に厚さ100μmのゲル層を作製した. ゲル化後, 各歯周組織由来細胞をゲル上に播種, 2および3週間培養した. 各培養期間後の根面到達細胞と歯根面との付着様式を電顕的に観察した. ゲル内細胞侵入試験の結果, 歯槽骨由来細胞と歯肉結合組織由来細胞の移動能はほぼ同じであったが, 歯根膜由来細胞の移動能は前二者に比べ有意に劣っていた. さらに, ゲル内を移動した歯槽骨由来細胞および歯肉結合組織由来細胞は, 発達した細胞質内小器官を有し, セメント質, 象牙質に良好な付着を示した. また, これら細胞は, 線維性付着の基礎となる細線維をセメント質上にのみ形成していた. 他方, ゲル内を移動した歯根膜由来細胞は, セメント質, 象牙質どちらの根面に対しても良好な付着関係を確立できなかった.
- 1993-04-25
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