再発性アフタと口腔常在菌叢との関連
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概要
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再発性アフタは, 口腔粘膜疾患のなかで, もっとも発現頻度が高く, 強い接触痛と繰り返し再発することから, 患者に多大な苦痛をもたらす. しかし, 本疾患の病因が解明されていないため, 治療はおもに対症療法が行われているにすぎない. そこで, 本研究では, 再発性アフタの病因と口腔常在菌叢との関連性を検索するため, 健常者の非アフタ群を対照として, 再発性アフタが頻繁に発現するアフタ群の唾液と舌背の構成菌の分布を比較検討した. 材料と方法 まず, 歯科関係の学生(498名)を対象に質問紙法で再発性アフタに関する調査を行い, その結果からアフタ群11名と非アフタ群6名の被験者を選択した. ついで, 被験者の口腔内診査(DMF歯率, plaque score)および唾液の性状(pH, 流出量, 緩衝能)の検査を行った. また, 細菌学的検索の試料として, 各被験者の唾液と舌背を払拭したものを, ブチルゴム栓をしたreduced transport fluid (RTF)に入れ, 嫌気状態で研究室に搬送した. 嫌気ボックス内でRTFを用いて希釈後, 5%緬羊脱線維血液加trypticase soy agarとCDC処方のanaerobe blood agarに塗抹し, 好気および嫌気的に培養した. 分離菌の分類は, グラム染色性, 細胞形態, 好気および嫌気試験を行い, それぞれ好気性菌,通性嫌気性菌, 偏性嫌気性菌に区別した. また, 両群の口腔常在菌叢の分布比率に相違が認められたグラム陽性カタラーゼ陽性球菌に関しては, STAPHYOGRAMとDNA-DNA hybridizationにより同定を行った. 結果 1. 両群の口腔内診査および唾液の性状検査の結果に, 統計学的な有意の差は認められなかった. 2. 両群の唾液と舌背の試料から通性嫌気性グラム陽性球菌が多数分離された. アフタ群では, 唾液で平均54.1%, 舌背で45.9%を占め, 非アフタ群ではそれぞれ平均50.6%と48.0%を占めた. 3. グラム陽性カタラーゼ陽性球菌の分布比率は, アフタ群の唾液で平均19.7%, 舌背で28.3%と高率を占めたのに対し, 非アフタ群ではそれぞれ平均3.3%と8.9%であり, 両群間で統計学的に有意の差が認められた(p <0.001). 4. STAPHYOGRAMとDNA-DNA hybridizationとの同定結果は, Stomatococcus mucilaginosusの2株を除いて, 他はまったく一致せず, STAPHYOGRAMの信頼性は認められなかった. DNA-DNA hybridizationによる同定では, Stomatococcus mucilaginosusがもっとも優勢に分離された. 結論 再発性アフタの発現機序に関与する細菌として, 従来からα-hemolytic streptococciなどが注目されてきた. 本研究結果から, アフタ群の口腔常在菌叢にグラム陽性カタラーゼ陽性球菌の分布比率が高かったことから, α-hemolytic streptococciよりも, むしろグラム陽性カタラーゼ陽性球菌が再発性アフタの病因に強く関与していると考えられる.
- 大阪歯科学会の論文
- 1993-04-25
大阪歯科学会 | 論文
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