マウス顎関節における弾性線維について
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概要
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本研究は, 弾性線維 (elastic, elaunin, oxytalan) が, 咬合機能とどのように関わっているのか, また発育・成長とともに弾性線維の構造および分布の変化を解明することを目的として, まず組織化学的な手法によって定性的に弾性線維の分析を行い, 次に顎関節の発生および成長に伴う弾性線維の分布および量的な変化を検索した. 実験材料および方法 1. 染色特異性の検討 材料には, その構成線維中にelastic, elauninおよびoxytalanの各線維を含むウサギの大動脈, およびoxytalan fiberのみを含むラットの歯根膜をもちいた. 各試料は, 通法に従ってparaffin切片とし, 酵素処理と染色法との組合せによって各線維の識別を試みた. 2. 成長と弾性線維との関係の検討 光顕的な観察には雄性のJCL/ICRマウス (胎生15〜18日, 生後1, 7, 14, 21, 30, 50および70日) の顎関節を一塊として摘出したものをもちいた. 各試料は10% formalinで固定, alcoholで脱水したのち, 通法に従ってparaffin包埋し, 前頭断および水平断の連続切片 (厚さ5μm) としたのち, 弾性線維染色を施した. また, 電顕的な観察には生後21日目の試料をもちい, 1% paraformaldehyde-2.5% glutaraldehyde, 1% osmium tetroxideで固定, alcoholで脱水, Epon 812で包埋し超薄切片を作製したのち, uranyl acetateとlead citrateとの重染色を施し, 日立HU-12透過型電子顕微鏡 (100kV) で観察した. 3. 弾性線維の定量 生後マウスの関節円板外側部を測定対象として, テレビカメラで捉えた顕微鏡像を画像解析することによって, 線維量を定量的に測定した. すなわち, 変換した2値画像における一定の測定範囲内での弾性線維が占める面積を数値として求めた. 結果および結論 1. 染色特異性の検討 Elastaseとβ-glucuronidaseを用いることによってoxytalan fiber, elaunin fiberおよびelastic fiberをそれぞれ識別することができた. 2. 成長と弾性線維との関係の検討 光顕的観察 : 胎生18日目ではoxytalan fiberは, 円板内側辺縁部で多くの側枝を出して外側翼突筋と付着し, 円板の外側部から外側辺縁部におよぶ部位では網目状を呈していた. Elaunin fiberは生後7日目では, 関節窩外側端から円板外側辺縁部におよぶ広い範囲では線維同士が交錯しながら走行し, 円板内側辺縁部では多くの側枝を出して外側翼突筋と付着していた. なお, この所見は胎生18日目でみられたoxytalan fiberの分布状態と類似していた. Elastic fiberは, 生後14日目にはoxytalan fiber, elaunin fiberと類似した分布を示した. その後elastic fiberは, 生後30日目から70日目では円板外側辺縁部にのみ限局され, 代わって太い膠原線維が認められた. 電顕的観察 : 生後21日目における関節円板外側部では, elastic fiberは, 電子密度が低い無構造な中央部とその周囲の電子密度の高いmicrofibrilとに区別された. Oxytalan fiberは, 電子密度の高いmicrofibrilが集束しているのみであった. Elaunin fiberでは, 多数のmicrofibrilのなかに無構造な物質が散在した. 3. 線維量の検討 Oxytalan fiberおよびelaunin fiberについては, 共染するため, 単独では同定できなかった. このため加齢による線維量の増減を検討することができなかった. Elastic fiberの量は, 生後1日目から21日目にかけて線維量が増加し, とくに生後21日目においては生後1日目の約8倍にまで増加した. 生後30日目から50日目にかけては減少傾向がみられたが, 生後50日目から70日目にかけては変化はみられなかった. 以上の結果から 1. 各線維の分布領域から判断すると3種の線維はすべて加圧に対する緩衝的な機能を発揮するものと考える. 2. Elastic fiberの量および分布の変化は, 膠原線維の動向に強く影響を受けているものと考えられる.
- 1992-08-25
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