Prevotella intermediaの産生する粘性物質について
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概要
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Prevotella intermedia (Bacteroides intermedius) は, 歯周疾患のみならず, さまざまな口腔感染症から高頻度に分離される常在菌の1つである. これまで著者らは臨床分離のP. intermediaのなかに, 粘性物質を培養上清中に産生する菌株があり, マウスに対して顕著な膿瘍形成能を示すことを明らかにしている. 本実験では, 粘性物質産生性の強いP. intermedia strain 17から粘性物質を分離精製し, 物理化学的性状を検討した. 教室保存株のなかで培養上清と細胞表層に粘性物質を産生するP. intermedia strain 17を用いた. 培養上清からの粘性物質の分離精製は以下の手順で行った. すなわち, Todd Hewitt brothに0.5% yeast extract, L-cystine 400mg/l, hemin 5mg/lを加えたenriched Todd-Hewitt broth (以下ETHB) 中で, 供試菌を48時間嫌気的に培養後, 8,000rpm, 30分間遠心することにより菌体と, 培養上清を得た. 培養上清に5%になるようにsodium acetateを加えたのち, 等量のethanolを加え, 粘性物質を析出させた. 遠心により粘性成分を回収し, 5% sodium acetate溶液に溶解したのち, chloroform : butanol溶液を1/5容加えて激しく攪拌後15,000rpm, 10分間遠心し, 水層を回収した. この水層を凍結乾燥し, 濃度が1% (w/v) になるように溶解してから, 35,000rpm, 2時間遠心し上清を得た. 上清を再度凍結乾燥したものを, 粘性物質標品として以後の実験に用いた. 菌体結合型粘性物質は, 菌体をWaring blenderで剪断したあとの上清をammonium sulfateで塩析し, 10〜60% sucrose gradientによる32,000rpm, 20時間遠心分離で分画, 精製した. 中性糖の定量はphenol硫酸法を, タンパク質の定量はLowry法を, uronic acidの定量はcarbazole硫酸法を, hexosamineの定量はElson-Morgan法を用いて, 通法どおり測定した. 中性糖の同定はSawardekerらの方法に従って行った. 加熱とpH値の変化が粘稠度に及ぼす影響は, それぞれの処理前後の粘稠度を測定することにより検討した. 得られた結果は以下のとおりである. 培養上清1lあたり約100mgの粘性物質が得られ, 電子顕微鏡では, 均一で微細な線維状の構造が互いに絡み合っている像として観察された. 熱, pHおよび酵素に対する感受性は, 両物質ともきわめて類似していた. また, 両物質はいずれも中性糖からなり, uronic acid, hexosamineあるいはタンパク質は含まれていなかった. また, 両物質はgas liquid chromatographyによる溶出パターンは類似しており, いずれもmannoseとglucose比は5 : 1であった. それゆえ, P. intermedia strain 17によって産生される上清由来と菌体結合型の粘性物質は同一物質であると考えられる. 100℃の加熱で, 両粘性物質とも粘性は消失した. 電顕観察では, 数本の長い線維状構造物が直線的に伸びており, 細い線維束が絡み合った像はほとんど認められなかった. それゆえ, 粘性物質の粘性は, 個々の線維状物質の絡み合いによると推測される.
- 1992-08-25