Streptococcus oralis strain 2705由来周毛性線毛の精製と性状
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概要
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Streptococcus mutansは, sucrose非依存性の付着性, sucroseからの不溶性グルカン産生性, 酸産生性, 耐酸性などを兼ね備えたう蝕誘発性菌として魅力のある細菌である. しかし, 内因感染の特性上すべてのう蝕にS. mutansが関連していることは考えられない. 事実, S. mutans以外のレンサ球菌でう蝕誘発性状を示す細菌は多い. 荒垣らは, 口腔内から線毛を有するS. salivariusとS. oralisを分離し, 線毛の局在性, 赤血球凝集性および疎水性について報告している. 本実験では, 荒垣らが分離同定した菌株のなかでtype Aの線毛を有するS. oralis strain 2705から線毛を分離精製した. また, 精製線毛に対する抗体を作製し, colony immunoblotにより同菌種および他菌種での同一typeの線毛を有する菌株の分布を検討した. 線毛は以下の手順で精製した. すなわち, S. oralis strain 2705をtrypticase soy brothで大量培養し, 8,000rpm, 20分間の遠心で菌体を回収後, 20mM Tris-HCl buffer (pH6.7) に浮遊させた. この菌体浮遊液を-20℃のフリーザー中で一夜放置後, 融解し, Waring blenderを用いて菌体から線毛を剥離した. 8,000rpm, 20分間の遠心により菌体およびcell debrisを除去し, 上清に30%飽和になるようにammonium sulfateを加え, 一夜放置後, 8,000rpm, 30分間の遠心で沈渣を取り除いた. この上清に50%飽和となるようにammonium sulfateを添加して一夜放置したのち, 8,000rpm, 60分間遠心した. 回収した沈渣をTris-HCl bufferに溶解し, 同bufferで十分に透析をしてammonium sulfateを除去した. ついで, 10〜60% sucrose gradientに粗線毛標品を重層し, 32,000rpm, 20時間遠心した. 遠心後0.5mlずつ分画し, 線毛画分を得た. 再び同条件で10〜60% sucrose gradientによる遠心分離を行い, 精製線毛を得た. 線毛の形態は, 2% uranyl acetateでnegative染色し, 透過電子顕微鏡を用いて, 加速電圧100kVで観察した. 精製線毛に対する抗血清は, 雄性の家兎に, 0.3mgの抗原をFreund's incomplete adjuvantと混合し, 1週間に1度の間隔で4回投与し, 作製した. SDS-PAGEはLaemmliの方法で行った. Western blotはTowbinの方法で, colony immunoblotはNishikawaらの方法に準じて行った. 得られた結果は以下のとおりである. Sucrose gradientによる遠心分離を2回繰り返して得られた線毛画分は, 電顕観察で均一な線維状構造物として観察された. Sepharose CL-6Bを用いたゲル濾過では, 線毛はvoid volumeに続いて単一のピークとして溶出された. 精製線毛に対する抗血清と抗原との免疫電気泳動では, 単一の沈降線が観察された. したがって, 本線毛は形態学的, 免疫学的に, また, 分子量においても均一であると考えられる. SDS-PAGEの結果, 線毛は14kDa付近に単一バンドとして確認された. また, Western blotでは, SDS-PAGEで得られたバンドと同じ位置で明瞭な発色を示した. それゆえ, 本線毛は14kDaのモノマーで構成されていると考えられる. Colony immunoblotでは, 精製線毛に対する抗血清とstrain 2705との間に明瞭な発色が認められたが, type Aの線毛を有する他のS. oralisでは認められなかった. したがって, S. oralisには抗原性が異なる周毛性線毛が存在していることを示唆している.
- 1992-08-25
著者
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