被験歯の保存条件および歯種がコンポジットレジン修復の辺縁漏洩に及ぼす影響について
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概要
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従来より辺縁漏洩試験には被験歯としてさまざまな環境下で保存されたヒト歯が用いられてきたが, 最近ではヒト歯の入手困難に伴いウシ歯を代用したものも少なくない. このように被験歯の選択は研究者によって多少の差異がみられるにもかかわらず, 辺縁漏洩に対する被験歯の影響について検討した報告はみられない. そこで辺縁漏洩試験に用いる被験歯を再検討する意味で, 抜歯後5種の条件下で保存したヒト歯 (実験1) と3種の条件下で保存したウシ歯 (実験2) の歯冠部および歯頚部にコンポジットレジン修復を行い, 被験歯の保存条件および歯種が辺縁漏洩にどのような影響を及ぼすかについて比較検討した. 実験1に用いたヒト歯は齲蝕, 修復および亀裂のない上下顎第三大臼歯で, その保存条件は抜去後直ちに4℃生理食塩水中に浸漬し12時間以内, 1週, 1か月, および6か月間保存したものと-40℃で凍結保存したものの5種である. 実験2に用いたウシ歯は下顎前歯で屠殺直後に4℃生理食塩水中に浸漬し12時間以内保存したもの, -40℃で凍結保存したもの, および抜髄後-40℃で凍結保存したものの3種である. これら被験歯の遠心および近心隣接面 (実験2では唇面) に歯冠部および歯頚部窩洞を形成し, K-etchantとClearfil Photo Bondあるいは10%クエン酸-3%塩化第二鉄溶液とSuperbond D-Linerの2種の象牙質接着システムを用いてコンポジットレジン修復を行い, 24時間後に研磨したのち, 直ちに漏洩試験を行うものとさらに6か月間37℃蒸留水中に保存したのち同試験を行うものの2群に分けた. 辺縁漏洩試験は37℃, 0.6%Rhodamin B水溶液中に40分間浸漬する色素浸透試験あるいは60℃と4℃の同色素液中にそれぞれ1分間ずつ20回繰り返すサーマルサイクル試験を行った. 辺縁漏洩度の判定は紫外線照射下実体顕微鏡で清水の方法に準じて行い, 同時にレプリカ法で窩縁部のSEM観察を行った. 以上の実験より次の結論を得た. 1. ヒト歯の歯冠部窩洞において, 被験歯の保存条件による影響は認められなかった. 2. ヒト歯の歯頚部窩洞において, 被験歯の保存条件によって漏洩度が大きく影響をうけることが判明した. 3. ウシ歯の歯冠部, 歯頚部両窩洞において, 被験歯の保存条件ならびにヒト歯と比較して若干異なった漏洩度を示したが, エナメル質に亀裂を生じさせるような温度変化を負荷する条件下ではウシ歯は代用被験歯として適当でないことが判明した. 4. 被験歯の保存条件および歯種に関係なく, 両窩洞とも辺縁漏洩度とSEM観察における間隙には相関は認められなかった. 5. 全般に, 漏洩度に対する修復後の浸漬保存期間の影響は認められなかった. 6. 10%クエン酸-3%塩化第二鉄溶液とSuperbond D-Linerで処理した場合の漏洩度はK-etchantとClearfil Photo Bondの場合に比べ低い値を示し, とくに歯頚部窩洞で顕著であったが, 2種の象牙質接着機構の異なるボンディングシステムを用いても被験歯の保存条件ならびに歯種による漏洩度の傾向に相違は認められなかった.
- 大阪歯科学会の論文
- 1992-04-25
著者
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