顎関節部軟組織の生物力学的特性に関する研究
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概要
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顎関節症の成因を考えるうえで, 顎関節に加わる荷重に対する顎関節部軟組織の応答は重要な関心事である. 従来, 顎関節に加わる圧や力は, 実験動物の顎関節部に圧力センサを埋め込む方法, ヒトでは生体シミュレーションモデルから力学的に導出する方法や下顎頭の変位量から類推されてきた. しかし, ヒト顎関節部軟組織の質的情報, すなわち生物力学的特性を直接とらえた報告は少なく, 日常臨床では顎関節の弾力性試験や下顎限界運動量の大小を顎関節のゆるみとして, 顎関節部軟組織の生物力学的特性を診査してきたにすぎない. 本研究では, ヒトにおける顎関節部軟組織の生物力学的特性を機械モビリティから客観的にしかも無侵襲的に診査する方法を開発し, 本法から得た顎関節部軟組織の生物力学的特性と, 従来より行われてきた顎関節のゆるみの指標との関係から顎関節機能の診査診断への応用の基礎的検討を行った. 顎関節部軟組織の生物力学的特性は, 機械モビリティ測定装置と解析用パーソナルコンピュータから構成されたシステムにより粘性 (c), 弾性 (k) および質量 (m) の3つのパラメータから評価できる. 本システムを使用し, 姿勢 (uprightおよびsupine) の違いや開口量 (安静空隙量の1/2, 安静空隙量, 最大開口量の1/10, 1/5, 2/5および3/5の各開口量における下顎位) の違いが顎関節部軟組織の力学パラメータに及ぼす影響を調査することによって測定条件を検討したうえで, 力学パラメータの日内および経日変動, 性差, 下顎限界運動量と力学パラメータとの関係, アンテリアガイダンスと力学パラメータとの関係について検討した. 被験者には, 顎機能に異常を認めない健常有歯顎者28名 (男性14名, 女性14名) を選択した. その結果以下の知見を得た. 1. 各被験者 (4名) とも, supineではcおよびmの値はそれぞれuprightの約1.5倍, kで約2倍であった. また, 標準偏差はsupineと比較してuprightの方が小さかった. 2. 各被験者 (4名) とも, 安静空隙量1/2と安静空隙量の開口位ではいずれのパラメータも後者の方が小さく, 最大開口量の1/10および1/5の開口位では安静空隙量の開口位とほとんど差は認められなかった. しかし, 最大開口量2/5, 3/5開口位では, 安静空隙量の開口位よりも各パラメータ値は大きかった. 3. 健常者 (4名) では日内および経日的に顎関節部軟組織の力学パラメータは変動係数で約5%と安定していた. 4. 顎関節部軟組織の力学パラメータの平均値は, 男性健常者 (14名) ではcは159.7 (Ns/m), kは667.5 (×10^2N/m), およびmは452.6 (g) であった. また, 女性健常者 (14名) ではcは124.1 (Ns/m), kは535.0 (×10^2N/m), およびmは331.7 (g) で, いずれの力学パラメータも男性の方が女性よりも危険率5%で有意に大きな値を示した. 5. 能動的ならびに受動的な最大開口量, end-feel量, 前方限界運動量およびCO-CR量は, 力学パラメータcおよびkとの間に危険率5%で有意な相関が認められた. 6. Overbite量およびoverjetとoverbiteの比は力学パラメータcおよびkとの間に危険率5%で有意な相関が認められた. 以上の結果から, 本測定システムにより健常者の顎関節部軟組織の生物力学的特性を客観的に, 無侵襲的に評価することができ, 顎関節機能の診査診断への応用の可能性が示唆された.
- 1992-04-25
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