選択的細胞誘導下での種々な処理根面に対する新付着に関する研究
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概要
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歯肉剥離掻爬手術後の新付着成就には, 細胞付着に適切な根面性状および根面上への歯根膜由来細胞の集積が必要であると考えられている. このことから, 現在, 種々な根面処理に加え, 歯根膜由来細胞を根面へ選択的に誘導するguided tissue regeneration technique (GTR法) の応用が試みられている. このGTR法応用後の付着様式に関しては, 数多くの組織学的報告がなされているが, その大半は掻爬象牙質根面を対象としたものであり, 他の根面性状についての研究はほとんどみられない. そこで本研究では, 種々な根面処理を施した根面と歯肉弁間にMillipore^[○!R]フィルターを挿入し, その際, 各根面上にみられた付着様式を光電顕的に検索した. 実験動物には永久歯列の完成した16頭のサルを用いた. まず, 上下顎左右側中切歯, 側切歯ならびに犬歯にCatonとZanderの方法に準じ, 人工的歯周炎を惹起させた. ついで, プラークコントロールにより同部の歯肉炎症を消退させたのち, 歯肉剥離掻爬手術を施した. そして, 上下顎左右側中切歯, 側切歯および犬歯の露出根面に対し, 1) ルートプレーニング, 2) ルートプレーニング後クエン酸塗布, 3) セメント質一層掻爬, 4) セメント質一層掻爬後クエン酸塗布のいずれかの根面処理をサル1頭ずつに行った. そして, 上下顎左側中切歯, 側切歯および犬歯の処理根面と歯肉弁間には, Millipore^[○!R]フィルターを挿入し, 実験群とした. 一方, 上下顎反対側中切歯, 側切歯および犬歯の根面と歯肉弁間には, フィルターの挿入を行わず, これを対照群とした. 動物は術後1, 2, 4および8週にて屠殺, 組織ブロックを採取, 光顕ならびに電顕試料作製を行った. その結果, 術後1週のフィルターを使用した掻爬セメント質根面および掻爬象牙質面では, 再生肉芽組織の伸展がフィルターを使用しなかった対照群に比べて, より歯冠側にまで認められた. また, その程度は, 掻爬セメント質根面の方がより著明であった. 反面, 脱灰掻爬象牙質根面および脱灰掻爬セメント質根面では, 実験群, 対照群とも, このような再生肉芽組織の伸展がまったくみられなかった. そして, 術後4週までは, すべての根面性状において実験群は, 対照群に比べて治癒が遅延していた. 組織学的形態計測では, 結合組織性付着量に関して, 掻爬象牙質根面を除き, 実験群と対照群間に有意差は認められなかった. また, 新生セメント質形成量および新生骨形成量に関しても, すべての根面性状において, 実験群と対照群間に有意差はみられなかった. 超微構造学的には, 各根面性状において, 実験群と対照群は同様の付着様式を示した. すなわち, 掻爬象牙質根面では, 新生セメント質形成を示す密なコラーゲン原線維の集積がみられた. これに対し, 掻爬セメント質根面では, 新生線維が根面に垂直に進入する線維性付着が認められた. そして, 脱灰掻爬象牙質根面ならびに脱灰掻爬セメント質根面では新旧線維の嵌合がみられた. 以上のことから, GTR法の応用如何に関わらず, 付着様式は根面性状によって決定されることを示唆した.
- 1992-04-25