成人正常者における咬頭嵌合位および側方運動時の咬合状態に関する研究 : 第1編 立体的検索方法および咬頭嵌合位の咬合状態 第2編 側方運動時作業側の咬合状態
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概要
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上下顎咬合面の咬合状態に関する調査, 検討は口腔諸機能の中でも最も重要な研究分野であり, 下顎運動の研究とともに, 歯科補綴学分野の重要な課題といえる. そこで著者は, 口腔内で採得した咬合記録から, 上下顎咬合間距離による分類での咬合域分布図を作成する新しい計測方法"Superposed rubber pattern method" (以下SRP法と記す) を開発した. この方法によって作成した分布図から, コンピューターおよびイメージアナライザーを応用して, 片側下顎臼歯群基準外形 (咬合面域) の面積, 上下顎咬合面間距離による分類での各咬合域として2.0mm凌駕域 (2.0mmを含まない以上域), 2.0mm以下1.0mm凌駕域, 1.0mm以下0.5mm凌駕域および0.5mm以下域の面積, また0.05mm以下域を接触域とみなしこの面積と点数, ならびに上下顎咬合面間空隙量 (intraocclusal cubic volume, 以下ICVと記す) を測定することで立体的に検索した. 被験者は平均24.5歳の成人正常者20名で, 左右側臼歯部40側を対象とした. 第1編においては本研究方法の詳細ならびに咬頭嵌合位における測定結果について, 第2編においては側方運動時作業側における測定結果について検索し, 下記の知見が得られた. 第1編 1. SRP法で作成した咬合域分布図は, 咬頭嵌合位における咬合状態を視覚観察でき, 上下顎咬合面の咬合状態を立体的に表現することが可能であった. 2. 咬合面域の面積は, 平均値318.31mm^2であった. 3. 咬合面域の面積に対する各咬合域の面積の占有率は, 平均値で2.0mm凌駕域42.78%, 2.0mm以下1.0mm凌駕域17.92%, 1.0mm以下0.5mm凌駕域15.77%および0.5mm以下域23.53%であった. 4. 接触域の面積は平均値21.44mm^2, 点数は平均値8.5点であった. 5. ICVは, 平均値289.78mm^3であった. 6. 緊密に嵌合する接触域の検索のみならず, その他の接触に近接した咬合域やICVの検索も重要であることが示唆された. 第2編 1. 側方運動時作業側における下顎の側方移動量の増加に伴い2.0mm凌駕域の面積は増加傾向を示し, 2.0mm以下1.0mm凌駕域では移動量2mmまでは面積が増加するが3mm減少し, 1.0mm以下0.5mm凌駕域では移動量1mmまでは面積が増加するが2mm, 3mmと移動するにしたがって漸次減少し, 0.5mm以下域では移動量3mmまで漸次減少した. 2. 接触域の面積, 点数いずれも側方移動量の増加に伴い漸次減少するが, 面積に比較して点数は減少が緩徐であった. 3. ICVは側方移動量の増加に伴い比例的増加傾向を示した. 4. 0.5mm以下域および0.05mm以下域では側方移動量1mmにおいて面積が激減し, とくに0.05mm以下域で顕著であった. 5. 側方移動量の増加に伴いICVは増加するのに対し, 0.5mm以下域および0.05mm以下域では面積が激減し, とくに0.05mm以下域で顕著であった. 6. 側方運動時作業側においても接触域のみならず, 近接した咬合域やICVの意義が認められた.
- 1991-10-25
著者
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