延髄腹側網様亜核背外側部における歯髄ニューロンについて
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概要
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三叉神経脊髄路核尾側亜核の腹内側に隣接する延髄外側網様体には, 三叉神経支配領域からの侵害受容性入力を受ける三叉神経性侵害受容ニューロンが分布している. この延髄外側網様体は, 延髄背側網様亜核外側部と脊髄の第VII層に対応すると考えられている延髄腹側網様亜核背外側部とに分けられる. 前者の三叉神経性侵害受容ニューロンは視床の後内側腹側核固有部に投射する広作動域ニューロンであり, 大脳皮質体性感覚野へ投射する痛覚伝導路の二次ニューロンとしての機能をもっていることが, すでに明らかにされている. ところが, 後者のニューロンについては, ほとんど解明されていない. そこで, このニューロンのうち, 歯髄からの入力を受けるニューロン (以後, 腹側網様亜核歯髄ニューロンと呼ぶ) の投射様式あるいは歯髄入力を腹側網様亜核歯髄ニューロンへ中継するニューロンの局在部位を調べ, 腹側網様亜核歯髄ニューロンの機能的意義について検討した. 実験動物には, ウレタン・クロラローズで麻酔したネコを用いた. そして, 単一二ューロン活動の細胞外記録には, 2% Pontamine sky blueを加えた0.5M酢酸ナトリウム溶液を充填したガラス毛細管微小電極を用い, 電気泳動的にガラス毛細管微小電極から色素を記録部位に注入し, 生体染色を施した. そして, 脳を灌流固定したのち, 記録部位を組織学的に同定した. また, 視床あるいは中脳に電気刺激を加えて, 逆方向性に興奮する腹側網様亜核歯髄ニューロンを検出した. なお, 逆方向性興奮をしているかどうかを検証するには, 100Hz以上の高頻度刺激に, 一定の潜時で, スパイク発射が追従することおよび同一軸索において順方向性興奮によるスパイク発射と逆方向性興奮によるスパイク発射とが衝突することを示唆する所見が認められることを基準とした. 得られた結果は, 以下のとおりである. 腹側網様亜核歯髄ニューロンの大多数は, 両側上下顎犬歯歯髄への電気刺激に反応するだけではなく, 角膜, 耳介, 顔面, 鼻背あるいは舌などにも末梢受容野をもっていた. これらのニューロンのなかには, 視床髄板内核の一つである外側中心核あるいは中脳網様体への電気刺激によって逆方向性興奮を示すものが認められたので, 腹側網様亜核歯髄ニューロンは直接的に, あるいは中脳網様体を経由して間接的に視床髄板内核に投射していることが判明した. さらに, 末梢からの歯髄入力を延髄腹側網様亜核背外側部に中継するニューロンの局在部位は, 三叉神経脊髄路切断術による実験成績から三叉神経脊髄路核の腹内側に隣接する小細胞性網様核であることが明らかとなった. 以上のことから, 腹側網様亜核歯髄ニューロンは, 視床髄板内核から大脳の広汎な領域へ投射する広汎視床投射系を介して, 歯痛に伴う情動反応あるいは覚醒反応などに関与していると考えられる.
- 1991-08-25
著者
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