永久歯う蝕の罹患性傾向に関する研究 : とくに, 小学校1年生時に実施した改良Snyder testについて
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概要
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小学校入学時に将来の永久歯う蝕の罹患状況を予測できることは, 児童の歯科保健管理を効率よく展開するために極めて重要な事項である. そこで, 小学校1年生の定期歯科健康診断時に実施した改良Snyder testが, う蝕罹患性傾向を示す指標になり得るかを1年生から6年生までのう蝕罹患状況から追跡調査し, 加えて対象集団のう蝕罹患状況が変化した場合においても, この改良Snyder testの評価が有用な指標になり得るかを比較検討した. 対象者は, 大阪府下の某小学校に1980年から1982年に入学し, 卒業まで在籍した739名とし, 毎年5月に歯の検査を行い, また, 改良Snyder testを1年生の検査時にあわせて実施した. なお, 全対象者のうち, 373名について毎年5月と11月にリン酸酸性フッ化ナトリウムゲルを用いて歯面塗布を実施した. 改良Snyder testの個人評価は, pH指示薬B. C. G. 添加の酸性加糖高層寒天培地に唾液0.5mlを採取後, 37℃で72時間培養し, 24時間ごとの色調変化量を0.5きざみに0から4までの点数を与え, 3日間の合計値で行った. また, 改良Snyder testの集団での評価区分として2.5以下群 (L群), 3.0から4.0群 (M群) および4.5以上群 (H群) の3群に分け, 各群のう蝕罹患状況について比較した. 以上の調査により, 次の結果を得た. 1. フッ化物歯面塗布を実施しなかった対象児童 (非塗布児童) の男女合計の1年生時DMFT indexは, 0.59歯, 標準偏差0.95歯, 6年生時のDMFT indexは, 4.19歯, 標準偏差2.73歯であった. フッ化物歯面塗布を実施した対象児童 (塗布児童) では, 男女合計の1年生時DMFT indexは0.47歯, 標準偏差0.86歯, 6年生時のDMFT indexは3.13歯, 標準偏差2.16歯であり, 非塗布児童に比べ6年生時のDMFT indexで1歯以上低いう蝕罹患状況を示した. 2. 改良Synder test評価区分別の1年生時のdeft indexは, 非塗布児童および塗布児童ともL群が最も低く, 次いでM群, H群の順に高くなった. 3. 改良Snyder test評価区分別のDMFT indexの推移では, 非塗布児童および塗布児童ともL群がいずれの学年においても最も低く, 学年が進むにつれて他の2群との差が大きくなった. M群とH群との比較では, 非塗布児童で両群の差が小さく, 一方, 塗布児童ではM群がいずれの学年でもH群に比べ低く, その差も大きくなった. 4. 1年生時に永久歯う蝕を有しない児童について, 改良Snyder test評価区分別のDMF者率では, L群が最も低く, 次いでM群, H群の順に高くなった. 5. 改良Snyder test評価区分別に萌出後歯年齢を基準とした(6∣6)___-のDMFT rateは, 非塗布児童および塗布児童ともL群が最も低い値を示し, 次いでM群, H群の順に高くなったが, M群とH群間の差は明確なものではなかった. また, (6∣6)^^^-のDMFT rateは, 非塗布児童および塗布児童ともL群が最も低く, 次いでM群, H群の順に高くなった. とくに, 塗布児童のL群が低い値で5歯年まで推移した. さらに, <21∣12>___-のDMFT rateは非塗布児童の場合, 3群間にほとんど差は認められなかった. 一方, 塗布児童の場合, H群が最も高い値を示し, 他の2群間には差が認められなかった. 以上のことから, 1年生時に実施した改良Snyder testは, 永久歯う蝕の罹患状況の異なる両児童集団において, 永久歯う蝕の罹患性傾向の予測性が得られることが明らかとなった.
- 大阪歯科学会の論文
- 1991-08-25
著者
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