Bacteroides (Porphyromonas) gingivalisの性状に関する研究
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概要
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黒色色素産生性Bacteroidesはヒ卜の口腔常在菌叢の構成菌として普遍的に見出され, 多くの口腔感染症からも優勢に分離されている. とくに, B. gingivalisは実験動物に膿瘍を形成すること, 種々のタンパク質分解作用を示すこと, また, 莢膜や線毛をもつことなどから有力な歯周病原細菌とみなされている. B. gingivalisの病原性状のうちtrypsinやcollagenase活性および線毛はよく研究されている. しかし, 発現した病原性状と関連の深いbacteriophageやplasmidの存在については, ほとんど研究されていない. また, B. gingivalisは血清学的には3種に分類され, 均一な種ではないと考えられている. 本研究では, 臨床分離したB. gingivalisにおけるbacteriophageとplasmidの存在を検索するとともに, photo-biotin法でDNA相同性を測定し, 病原性に関する表現形質との関連性やB. gingivalisの均一性について検討した. 菌株は重度歯周疾患患者の歯周ポケット由来株46株, 歯槽膿瘍由来株3株および根尖病巣由来株7株の合計56株と標準菌株のB. gingivalis ATCC 33277株および381株を用いた. Bacteriophageは紫外線で誘発し, 2% uranyl acetateでnegative染色後, 電子顕微鏡で観察した. Plasmidは被験菌のDNAを抽出後, agarose gel電気泳動法で検出し, 種の均一性はphoto-biotinでラベルしたDNAをhybridizeさせ, DNA相同性値を求めて検討した. 酵素活性はAPI ZYMを用いて19種とlecithinase, lipase, DNase, plasmin, coagulase, collagenaseおよびβ-lactamaseの活性をそれぞれ求めた. 細胞表層とbacteriocin様活性は通法により観察した. 結果と考察 1. Bacteriophageは歯周ポケットと根尖病巣由来株の11株で観察され, 六角形の頭部と細長い尾部を有していた. 2. Plasmidは歯周ポケットと根尖病巣由来株からそれぞれ1株ずつ検出された. 3. 臨床分離株はATCC 33277株と381株にそれぞれ高い相同性を示すグループに分かれたが, いずれの菌株も65%以上の相同性を示した. 4. 線毛は供試菌株の約90%で観察され, 幅5nm (Aタイプ) と10nm (Bタイプ) の2種類が認められ, 前者の観察頻度が著しく高かった. 5. 外膜で形成される小胞は, 供試菌株の96%で観察され, その形成量と大きさは菌株間で相違していた. 6. Alkaline phosphatase, trypsin, acid phosphatase, phosphoamidase, β-galactosidase, N-acetyl-β-glucosaminidase, collagenase, plasminとDNase活性はほとんどの菌株で, esterase (C4) 活性は50%の菌株で検出された. しかし, lecithinase, β-lactamase, lipaseとcoagulase活性はいずれの菌株にも認められなかった. 7. Bacteriocin様活性は全供試菌株でみられた. 8. β-lactam剤耐性菌は6株分離されたが, β-lactamase活性はどの耐性株にも認められなかった. しかし, plasmidは2株から検出された. β-lactam剤以外の耐性菌は5株認められた. 以上の結果から, B. gingivalisの一部はPrevotella intermediaと同様に溶原化しているものと推定される. 溶原化と酵素活性は, bacteriocin様活性および線毛との間で特別な関係は認められなかった. Plasmidはβ-lactam剤耐性を支配している可能性が示唆されたが, β-lactamase産生性は支配していなかった. 外膜での小胞形成は毛による本菌の宿主細胞への付着に続く, 菌体外への酵素分泌に関連した重要な病原因子と考えられる. DNA相同性の結果はP. intermediaとは異なり, B. gingivalisが均一な種であることを示唆している.
- 大阪歯科学会の論文
- 1991-08-25
著者
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