口腔内から分離したBacteroides forsythusの同定と抗生物質感受性
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概要
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Bacteroides forsythus (B. forsythus) は, 1986年にInternational Journal of Systematic Bacteriologyに報告された新菌種であり, しばしば, 重度の歯周疾患患者の歯周ポケットから分離されている. 本菌は, 非黒色色素産生性の偏性嫌気性グラム陰性桿菌で, 強いtrypsin活性を有することから, 新しい歯周病原細菌として注目されている. B. forsythusが口腔内で歯周ポケットや根尖周囲組織から分離されたことについては, Tanner et al. やLai et al. により報告されている. しかし, その他の口腔部位からB. forsythusが分離されたという報告やB. forsythusの抗生物質感受性についての報告はない. B. forsythusは, 他のBacteroidesに比べ発育が遅く, 血液寒天培地以外ではほとんど発育しないため, 通常の方法で同定することが困難である. 本実験では, 歯周ポケット内でのB. forsythusの分布比率を知るために, ポケットから分離した非黒色色素産生性Bacteroidesの中で, trypsin活性を有し, 液体培地で発育が悪い菌株をAPI ZYM systemによる酵素活性パターンで同定した. また, 歯槽膿瘍および含歯性嚢胞からそれぞれ分離された類似菌についてAPI ZYM systemとDNA-DNA hybridization法で同定するとともに, 全供試菌株の抗生物質感受性についても検討し, 以下の成績を得た. 本実験に供試した50株は, B. forsythusのtype strainと類似の酵素活性パターンを示した. 歯槽膿瘍由来の1株に, 他のB. forsythusと, 形態や菌体タンパクの泳動パターンが異なる菌株が認められた. ラベルしたtype strainとのDNA-DNA hybridizationの結果, 供試したすべての臨床分離株のDNAはtype strainのDNAと同程度の相同性を示した. これらの結果は本実験に供試した50菌株が全てB. forsythusであることを示している. 重度歯周疾患患者の歯周ポケットの中で約40%にB. forsythusが検出され, 分布比率は, 多くの場合2%前後であったが, B. forsythusが10%以上を占める症例も2例認められた. 抗生物質感受性試験の結果では, 全体的に歯周ポケット由来株よりも歯槽膿瘍および含歯性嚢胞由来株の方が高いMIC値を示した. Clindamycinは全供試菌株に対して著しく高い抗菌力を示し, metronidazoleは, 歯周ポケット由来株に対して高い抗菌力を示した. 以上の結果から, 本菌の同定にAPI ZYM systemを利用することは有用であると考えられる. また, 本菌が種々のタンパク分解性を有することを考えると, 10%以上の比率で分離された症例では疾患の増悪にB. forsythusが関与している可能性が示唆される.
- 大阪歯科学会の論文
- 1990-08-25
著者
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