重度歯周疾患患者の歯周ポケットから分離した黒色色素産生性Bacteroidesの同定ならびに薬剤感受性に関する研究
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概要
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歯周疾患の発症と進行に, 歯周ポケット内細菌, とくに偏性嫌気性菌が深く関与していることは周知の事実である. 偏性嫌気性菌のなかでは, グラム陰性菌のBacteroidesやFusobacteriumが, また, グラム陽性菌のPeptostreptococcusやEubacteriumが高頻度に分離されている. Bacteroidesは, 血液寒天培地上で黒色色素を産生する菌 (BPB) と非産生菌とに分けられ, BPBに属するBacteroides gingivalis (B. gingivalis) とB. intermediusが口腔感染症の中心的な役割を果たしている. 両菌種は重度歯周疾患患者の歯周ポケットばかりでなく, 感染根管, 根尖性膿瘍歯周膿瘍などからも高率に分離されている. 一方, 歯周疾患の化学療法剤による治療を目的として, テトラサイクリン系薬剤, メトロニダゾール, エリスロマイシン, スピラマイシン, オフロキサシンなどが歯周ポケット内に投与され, 疾病の改善が認められている. これまでに報告されている歯周ポケット内容物からの分離菌のin vitroにおける薬剤感受性は高いと述べられている. しかし, 耐性菌についての報告もあり, β-ラクタム剤耐性にβ-ラクタマーゼが関与することも明らかにされている. このように, 歯周疾患の治療薬として抗生物質が多数応用されているにもかかわらず, β-ラクタム剤以外の薬剤に対する耐性化の動向についてはほとんど調査されていない. 本研究では, 重度歯周疾患患者の歯周ポケットから高頻度に分離されるBPBを, グルコースからの終末代謝産物, 生化学的性状, 酵素活性およびDNA相同性などから同定するとともに, 供試菌の薬剤感受性と耐性化の動向を菌種レベルで比較検討し, 以下の成績を得た. 供試菌は42株のB. intermediusと76株のB. gingivalisに同定された. 残りの3株はDNAの相同性によりB. endodontalisと同定された. B. intermediusに対してはミデカマイシンが, B. gingivalisに対してはペニシリンG, アンピシリン, アモキシシリン, セファロチン, セフォペラゾン, ドキシサイクリン, ミノサイクリン, ミデカマイシンおよびクリンダマイシンが, B. endodontalisに対してはペニシリンG, アンピシリン, アモキシシリン, セファロチン, セファマンドール, セフォペラゾン, ラタモキセフ, フロモキセフ, ドキシサイクリン, ミノサイクリン, エリスロマイシン, ミデカマイシンおよびクリンダマイシンがそれぞれ高い抗菌力を示した. 耐性菌はB. intermediusのみで検出され, その分離頻度はペニシリン系では19〜36%, セフェム系では5〜26%, テトラサイクリン系では17%およびマクロライド系では2〜5%であった. β-ラクタマーゼ活性は, B. intermediusで1株検出された. これらの結果から, B. intermediusは他のBPBと同様に, 元来, 薬剤感受性は高いが, 耐性化しやすい傾向を示しており, 歯周疾患の治療において, その動向を十分に知る必要がある.
- 1990-08-25
著者
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