DNA-DNA hybridizationによるBacteroides intermediusの同定
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概要
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口腔内に発症する感染症の大半は, 内因感染であり, その原因菌を特定することは困難であることが多い. しかし, 嫌気培養技術の進歩とともに, 口腔感染症での偏性嫌気性菌の占める比率が高くなってきている. 偏性嫌気性菌の中でBacteroidesは, 多形性を示す, 無芽胞, 非運動性のグラム陰性桿菌であり, ヒトの口腔や腸管などの常在菌叢に定住している. Bacteroidesの中では, Bacteroides fragilisグループと黒色色素産生性Bacteroides (BPB) が最もよく知られており, これらの細菌は嫌気性菌感染症の主役を演じている. B. intermediusは, Bergey's Manual of Determinative Bacteriology (8th ed.) では, B. melaninogenicus subsp. intermediusと分類されていたが, 主としてDNA-DNA hybridizationにより, Bergey's Manual of Systematic Bacteriologyでは, B. intermediusとB. corporisに再分類されている. Bergey's Manual of Systematic Bacteriologyでは, B. intermediusの同定のためのkey性状として, lactose非発酵性, starch発酵性およびindole産生性をあげている. しかし, 口腔領域から材料を採取し, 新鮮分離株を同定する場合, lactose発酵性が陽性であるために, それ以外の性状はB. intermediusの性状と一致するものの, 未同定とせざるを得ない菌株や, lecithinase, 粘性物質, あるいはβ-lactamase産生性などの付加的な性状を有する菌株に頻繁に遭遇する. 本実験では, これらの菌株をDNA-DNA hybridization法を用いて同定した結果, 以下の成績を得た. 定性的なdot hybridization法では, ラベルしたB. intermedius ATCC 15032のDNAとすべてのB. intermedius ATCC株のDNAとが相同性を示した. しかし, ラベルしたDNAとB. intermedius以外のBPBのDNAとの間には相同性は認められなかった. また, ラベルしたDNAとすべての臨床分離株のDNAとは, B. intermedius ATCC株のDNAと同程度の相同性を示した. これらの結果は, 供試したすべての菌株がB. intermediusであることを示している. したがって, 臨床からBPBを分離する際にはlactose発酵性のB. intermediusについても考慮する必要がある. 定量的なマイクロプレート法では, 臨床分離のB. intermediusの中にDNA相同性が異なる2つのホモロジーグループが認められた. すなわち, 28株がATCC 25611のDNAと強い相同性を示し (68〜88%), 9株がATCC 33563のDNAと強い相同性を示した (68〜87%). 成人の口腔感染症由来のB. intermediusは, ATCC 25611グループの菌株が圧倒的に優勢であった. 一方, 33563グループの9株のうち, 7株が小児の唾液由来であった. 臨床分離のB. intermediusには, lactose発酵性, 粘性物質産生性あるいはβ-lactamase産生性などの表現形質や, 溶原性あるいはplasmidなどの保有性を2つのグループ間で区別することはできなかった. しかし, SDS-PAGEによる可溶性蛋白の泳動パターンでは, 明確に2つのグループが区別できた. したがって, JohnsonとHoldemanが指摘しているように, この2つのグループは将来的には異なる菌種に分けられる可能性が示唆される.
- 大阪歯科学会の論文
- 1990-08-25
著者
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