特定年齢集団におけるタッピング運動時の咀嚼筋EMGパラメータの分布(大阪歯科大学大学院歯学研究科博士(歯学)学位論文内容要旨および論文審査結果要旨の公表)
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概要
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近年タッピングは, 顎運動や筋電図解析による顎機能の評価法や加齢による運動能力の変化の分析法としてよく用いられている.しかしこれまでの報告ではその際, 基準とされる各パラメータのリズム性, ストローク回数, タッピング周期の規定や計測または分析区間などの違いによりいまだ正常基準値に一致がみられていない.またその被験者数も3〜30人程度と少なく, 必ずしもタッピング運動の動作学的な実態が示されていない.そこで本研究は, 本学第4学年学生114名(平均年齢22.8歳)におけるタッピング運動30ストローク時の筋電図学的な時間的変動や筋活動電位およびそのリズム性を解析することにより特定年齢層1集団のタッピング運動時の各パラメータにおける分布を分析することによりその特徴を知ることを目的とした.実験材料および方法 筋活動の記録は, 左右咬筋中央部と側頭筋前部を被験筋とし, 双極誘導にて行い, 4筋のduration, intervalおよびcycle timeを計測し平均値を求めた.またCVおよび積分値も算出した.以上から求めた各被験者の平均値の分布を比較検討するためにヒストグラムにおける度数分布を比率で表し, 分布の型を示す指標としてskew-nessとkurtosisを求めた.さらにcycle timeによって分けた3群における咬筋, 側頭筋の平均電位を求め分散分析を行った.また顎口腔機能の既往をアンケートで調査し, 無症状群に分けSPSSにて同等性の検定を行った.結果 時間的要素のcycle timeについてはdurationよりむしろintervalの影響を受けていることがわかった.一方CVにおいては, duration, intervalのCVは広い分布を示したことから, cycle timeリズムの獲得のため, dura-tionとintervalが相互に調整しあっていることが明らかとなった.Cycle time別3群における平均電位は, 分散分析の結果咬筋, 側頭筋ともに3群間に有意差は認められなかった.また積分値において咬筋, 平均187.4μVsec, 標準偏差80.3μVsec, 側頭筋, 平均150.1μVsec, 標準偏差73.6μVsecで広い分布を示し, 260mVsec以上の分布にでは有症状群の被験者が多く含まれていた.またCV, すなわち時間的パラメータの規則性において無症状群と有症状群の間のすべての分布に有意差がみられた.結論 今回は本学学生という特定集団の全体的な把握にとどまったがタッピング運動の筋電図の各パラメータにおいて, 特徴のある分布が示された.またヒストグラムにおける左右の裾の分布において, それが顎機能障害とは評価しにくく, 日常生活を問題なく営んでいる個人特有のタッピング運動が反映されていることが明らかとなった.一方, 各パラメータにおいてばらつき(個人差)が大きかったことは, タッピング周期を規定しなかったことや, 運動の遂行や調節に影響を与える因子として, 被験者の実験に対する協力意欲の強弱, 注意・意識水準の高さと持続力, 外乱刺激の有無および疲労などがあげられ, 今回は被験者数が114名と多く, いろいろな性格をもった一つの集団だったため, 個々の性格, すなわち実験に対する協力意欲の強弱, 注意・意識水準の高さと持続力なども実験結果に影響を及ぼしていることが推察された.さらに各パラメータの分布が, ある幅の範囲として表示されたことは, 顎口腔系機能状態の客観的評価時にすべての個人に限定された正常値を同定することの困難性が示唆された.しかし顎機能障害の既往がある, あるいはわずかな違和感をもつ群で筋電図の特定のパラメータにおいて分布状態が異なったことは今後, 顎口腔機能状態の客観的な評価の研究に役立つものと考えられた.
- 大阪歯科学会の論文
- 2000-06-25
著者
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