頭頸部癌根治照射例における後障害に対する研究
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概要
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頭頸部癌に対する放射線治療は, 根治性, 形態および機能温存を目的とし, 生活の質を良好に保ちうる療法である.しかしながら, 放射線治療後の急性あるいは晩発障害がみられることも否定できない.本研究は放射線治療後の頭頸部癌患者に対して, 抜歯に伴う放射線骨障害や唾液腺機能障害による口内乾燥などの後障害の発現状態とその対策を検討したものである. 1.対象は1990年から1996年までに本学附属病院に来院した頭頸部癌根治照射例30症例(上咽頭癌:19症例, 中咽頭癌:11症例)である.標的線量は59Gyから83Gyの範囲で, その中央値は69Gyであった.これらの患者に対して抜歯を行い照射野の内・外での骨障害発症の有無を検討した.放射線骨障害については来院時にすでに発症していた症例が3症例認められた.今回は照射野内および照射野外のそれぞれの抜歯による骨障害発症の有無を検討した.その結果, 照射野の内・外での抜歯にかかわらず, 骨障害を疑わしめるX線所見は認められなかった. 2.口内乾燥の対応策としては塩酸ピロカルピン内服薬を治験薬とした.対象は, 頭頸部癌根治照射後の口腔乾燥症を訴える患者4症例(上咽頭癌:2症例, 頬粘膜癌:1症例, 原発巣不明:1症例)である.使用方法は塩酸ピロカルピン内服薬を, 4週間ごとに3mg, 6mgおよび9mg / 日と漸増し, 投与2週間前の前観察期, 治験薬投与4, 8, 12週後および投与終了から2週間後の後観察期の唾液流量測定と血液検査, 尿検査, 総合評価および患者側の印象を検討した.その結果, 最も頻度の高い副作用は発汗であったが, 6mg / 日あるいは9mg / 日を用いた場合, 放射線治療による口腔乾燥症に対して改善効果が期待できるものと思われた. 以上のことから, 1)照射後の抜歯については照射野内・外の歯の確認, 照射野内の場合は抜歯前日からの抗生剤投与, 鉗子抜歯, 抜歯創の縫合, 長期投与に耐えうる薬剤選択, スケーリングの徹底などが抜歯後の骨障害発症の予防につながると考えられた. 2)頭頸部癌根治照射後の患者に対する塩酸ピロカルピン内服薬は放射線治療による口腔乾燥症に対して改善効果が期待できると考えられた.
- 2000-03-25
著者
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