口腔扁平上皮癌におけるサイトケラチン19遺伝子の分子生物学的研究
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概要
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サイトケラチン19(以下, CK19と略す.)は免疫組織化学的研究から, 正常な重層扁平上皮では基底細胞に限局して発現するが, 上皮異形成や癌化が生じるとその発現様式が変化し, 異型性の強い細胞にも発現することが知られている.しかし, 遺伝子レベルにおける口腔扁平上皮癌のCK19の解析はほとんど行なわれていない.そこで口腔扁平上皮癌とCK19遺伝子の関係をRT-PCR法とノーザンブロット法を用いて分子生物学的に研究した.症例は扁平上皮癌49例, 白板症7例, 紅板症3例および健常歯肉10例を用いた.なお白板症と紅板症症例における上皮異形成の程度は高度3例, 中等度4例および異形成を認めない症例3例であった.病変部を一定の大きさに切り出したあと, 標本からTotal-RNAを抽出し、逆転写酵素を用いてcDNAを合成した.次にCK19プライマーを合成し, これを用いRT-PCRを行いCK19mRNAの発現を確認した.次いでCK19遺伝子cDNA全長をプローブに用い, ノーザンブロット法にてCK19mRNAの発現量の比較を行なった.CK19遺伝子はRT-PCR法ではすべての標本で発現が確認された.ノーザンブロット法では扁平上皮癌において全例で強く発現していた.そして各症例間で発現量にわずかな差を認めたが, 腫瘍の発生部位, TNM分類におよび組織学的分化度との間に相関性は認められなかった.また, 中等度および高度の上皮異形成を示す紅板症と白板症では明らかな発現がみられたが, 異形成を認めない症例では正常歯肉と同様にわずかな発現しか認められなかった.これより, 上皮異形成や癌細胞ではCK19遺伝子の転写が正常細胞よりも活発に行なわれていると考えられ, CK19遺伝子は上皮異形成や癌化に影響を及ぼしている因子であると考えられた.
- 大阪歯科学会の論文
- 1998-06-25
著者
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