ドコサヘキサエン酸投与によるSAMP 8系マウス学習・記憶障害の栄養学的改善
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概要
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SAMP 8系マウスは, 正常な発育・発達ならびに成熟過程を経たのち, 急速かつ不可逆的に老化徴候を発現する老化促進モデルマウスの1系統である. 本研究では, SAMP 8系マウスとゆるやかな老化過程を経るSAMR 1系マウスを用い, 老化現象の発現特性と老化の個体差について, また, SAMP 8系マウスのもつ病的症状である学習・記憶障害の発症・進展について検討した. さらに, n-3系多価不飽和脂肪酸(PUFA)であるドコサヘキサエン酸(DHA)投与によって学習・記憶障害の発症・進展がどのように改善されるかについて追究した. 両系統マウスとも歴年齢による週齢別実験群と生物学的年齢による老化度別実験群に分割して実験を行った. 個々のマウスの学習・記憶能力はステップ・スルー型受動的回避学習試験により判定した. その際, 従来より用いられている判定法(移動の有無, ステップ・スルー潜時)に加え, 繰り返し試行を行ったときの反応様式を考慮した新判定法を策定し採用した. 各実験群マウスの歴年齢と生物学的年齢との相関, およびそれらを基準としたときの学習・記憶能力について検討した結果, 1.歴年齢と生物学的年齢(老化度)とは正の相関を示した. しかし, 同週齢のマウスでも老化度には個体差があることも示された. 2. SAMP8系の週齢別実験群では, 加齢変化として学習・記憶障害を発症し, その発症には27〜42週齢の間に大きな変換点があった. 3.老化度別実験群では, 両系統マウスとも, 老化度と学習能力間で負の相関を示した. これらの所見は, 老化の研究では, 加齢(歴年齢)変化を検討するのみではなく, 生理的, 生物学的変化を総括した老化度(生物学的年齢)についても十分考慮する必要があることを示している. 以上のような SAMP 8系マウスのもつ生理的老化と病的老化についての特徴を踏まえ, さらに病的老化の学習・記憶障害の改善について検索した. すなわち, 歴年齢と老化度が同一の両系統マウス実験群を対象に精製DHA配合飼料の短期間投与を行ったのち, 学習・記憶能力を判定した. その結果, SAMP 8系マウスの学習・記憶障害の進展は, SAMR 1系のもつ学習・記憶能力には及ばないものの, 雌雄を問わず改善されることが示された. 老化の進行過程では食餌脂肪酸のバランスが重要であり, とくにn-3系PUFAは学習・記憶障害の進展に改善作用をもつことが示唆された.
- 大阪歯科学会の論文
- 1996-06-25
大阪歯科学会 | 論文
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