糖尿病ラットの抜歯創治癒過程における微細血管構築の経口的変化について
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概要
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ストレプトゾトシン誘発糖尿病ラットを用いて糖尿病性細小血管症と創傷治癒との関係について研究を行った. 糖尿病ラットの上顎第一臼歯を抜歯後, 治癒過程における組織学的変化を光学顕微鏡で, 微細血管構築と骨の変化を微細血管鋳型・骨同時標本を用いて走査電子顕微鏡で経日的に観察した. 実験は Wistar系ラットを用い, 対照群, 糖尿病6週群および16週群とに分類し, それぞれ抜歯後3, 5, 7および14日に観察した. 各群各時期の組織切片(20μm)を作製し, ヘマトキシリン・エオジン染色を行って, 光顕にて観察した. また太田らのプラスチック注入法に従って上行大動脈よりプラスチックを注入し, 抜歯窩を注意深く切りだし, 10% NaOCIで腐食したのろ, 金蒸着を施し, 走査電子顕微鏡にて観察した. 結果は対照群では抜歯後3日で抜歯窩中央に血餅がみられるも抜歯窩はほぼ肉芽組織で満たされ, 抜歯後7日では抜歯窩中央に向かって歯槽壁全体から新生血管がみられた. 新生骨形成も始まり新生洞様血管の間に広がっていた. 抜歯後14日では新生骨の形成は増加し骨髄形態を呈していた. 糖尿病6週群では, 抜歯窩の創傷治癒は対照群とほとんど同じであった. しかし糖尿病16週群においては抜歯後7日で血餅が抜歯窩中央部にみられ, 骨小柱の形成はなく抜歯窩窩縁には網状の洞様血管がみられた. 抜歯後14日では抜歯窩はいまだ新生血管で満たされず, 新生骨小柱は既存の抜歯窩窩縁に沿って形成されていた. 抜歯創治癒過程での新生血管形成は新生骨形成とその成長に重要な関係があり, 糖尿病の細小血管症の進行に従い新生血管形成は遅延し, その結果, 新生骨形成も遅延していた.
- 大阪歯科学会の論文
- 1996-03-25
著者
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