ラット顎下腺における交感および副交感神経性 neuropeptide Y陽性線維の分布
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概要
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Neuropeptide Y (NPY)はブタの脳より同定され, 36個のアミノ酸からなる蛋白質で, C末端にチロシンアミドをもつpolypeptideである. 中枢はもとより末梢組織においても広く分布していることが明らかとなったが, 交感神経節や脳幹において noradrenalineと共存していることから adrenergic markerとして注目されるようになった. しかし, 検索されるにつれてすべての NPY 陽性神経線維が adrenergicであるとは限らず, non-adrenergicなものが存在することが明らかとなってきた. 本研究はラット顎下腺におけるNPY陽性神経線維の分布とその由来, さらにこれらの陽性神経線維が交感神経性の adrenergicなものであるのか, あるいは cholinergicなものであるのかを免疫組織化学的に検索した. 実験動物および方法 実験動物は Wistar系雄性ラット(120〜150g)を用い, pentobarbital麻酔下に一側の上頸神経節(SCG)を摘出し, 約10日後にZamboni液(2.0% paraformaldehyde, 0.2% picric acid, 0.1MPB)で灌流固定したのち, 顎下腺を摘出して凍結切片を作製した. なお非摘出側は対照とした. 免疫組織化学的検索には一次抗体として抗家兎NPY抗体(×1000)および抗マウスtyrosine hydroxylase (TH)抗体(×1000)を混ぜて用いた. 二次抗体には fluorescein isothiocyanate (FITC)で標識された抗家兎IgGと Texas Red (TR)で標識された抗マウスIgGを用い, 蛍光顕微鏡で観察した. Acetylcholinesterase(AchE)活性の観察には Lundbergらの方法で行った. 結果 1.顎下腺のNPY陽性神経線維の分布 腺房部では NPY陽性神経線維が血管に分布しており, そのほとんどがTHに対しても陽性であった. 一方, TH陽性神経線維は血管以外にも腺房部にも分布しており, 血管以外のTH陽性神経線維はNPYに対して陰性であった. 2. SCGのNPY陽性細胞 そのほとんどがNPYおよびTHに対して陽性であったが, わずかにNPYに対して陰性の細胞が認められた. 3. SCG摘出による変化 腺房部に分布していたほとんどのNPYおよびTH陽性神経線維は消失したが, わずかのNPY 陽性神経線維が残存していた. この残存していたNPY陽性神経線維はTHに対しては陰性であった. 4.顎下神経節のNPY陽性細胞およびAchE活性 顎下神経節にはNPY陽性細胞が認められ, これらのNPY陽性細胞にはTHに対して陽性のものと陰性のものとが存在した. また, 顎下神経節のすべての細胞にはAchE活性が認められた. 以上の結果より, ラット顎下腺に分布するNPY陽性神経線維のうち, SCG切除によって消失したTHに対しても陽性の神経線維は, SCG由来の adrenergic線維であり, SCG切除後に認められたTHに対して陰性の神経線維は, 顎下神経節由来のcholinergic線維であることが明らかとなった.
- 大阪歯科学会の論文
- 1995-06-25
大阪歯科学会 | 論文
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