老化促進モデルマウス (SAM) の唾液腺由来 N-アセチル-β-D-グルコサミニダーゼ活性およびその性状の加齢変動
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概要
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高齢化社会を迎え, 老化のメカニズムを解明することほ現在の重要なテーマの一つとなっており多方面から研究が進められている. しかし, 科学の著しい進歩にもかかわらず, まだほとんど解明されていない. そこで著者らの講座では, 加齢に伴う老化徴候の生化学的指標を見いだすため, 促進老化を示す SAM-P8//Odu (P系) と, その対照であるSAM-R1/Odu (R系) を用いて代謝調節酵素の活性発現やアイソザイムから生化学的な分析を試みている. 今回は, 7, 17, 27および37週齢の SAM 顎下腺と舌下腺から N-アセチル-β-D-グルコサミニダーゼ (NAGase) を抽出し, その活性発現, 酵素学的性状およびアイソザイムパターンの変化から, 唾液腺における老化現象の発現を追究した. その結果, 酵素活性対照臓器の肝では, 両系間で差異を示さず27週齢まで活性増大を続けたのに対し, P系の顎下腺および舌下腺では27週齢でR系より有意に低下し, 37週齢で再び増大する傾向を示し, P系では17週齢から27週齢にかけて促進老化による影響が酵素タンパクに生じていることが示唆された. また, NAGase に対する pH, 化合物添加および熱効果を検討したところ, p系の両唾液腺では, pH曲線, 熱安定性および活性賦活にR系とは異なった加齢に伴う変動がみられ, 酵素タンパクに質的変化も生じている可能性を強く示唆する結果を得た. また, 本酵素のアイソザイムを液体等電点電気泳動により分離したところ, R系の唾液腺では4個 (a, b, cおよびd) のピークに分離されたが, P系では酸性域のピークbが消失し, 活性分布率はピークaヘ集約した. これらのピークは, 等電点から推定して, ピークaは従来から知られている熱不安定性のアイソザイムA, dは熱安定性のB, bとcはAとBの中間に等電点をもつIに相当すると考えられ, P系におけるピークaへの集約は, 酸性域に等電点をもつ本酵素の糖タンパク構造に促進老化の影響が波及していることを示すものと推測された. 以上の所見より, P系の27週齢では両唾液腺の NAGase 活性とも促進老化を伴う量的・質的変動をきたしていることが明らかになった. また, その変動には, 酸性域で活性を示すアイソザイムが密接に関与していることが示唆された.
- 大阪歯科学会の論文
- 1994-06-25
大阪歯科学会 | 論文
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