小児における顎関節運動の解析
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概要
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近年, 若年の咬合異常者と顎関節症状を有するものとの関連について注目が集まっている. 本研究は, 小児における顆頭運動の基礎的なデータを得ることを目的として, 下顎に対して終末蝶番運動, protrusion-retrusion, mediotrusion-medioretrusion, opening-closingという4つの基本運動を行わせ, 顆路描記装置Axi-Path II Recorderを用いて顆頭運動路の三次元的な記録を行った. そしてその運動路の距離ならびに角度計測を行い, 平均値を求めると同時に計測結果について成人と比較分析し, 以下の結論を得た. 1. Manipulation techniqueによりreference positionでの顆頭の蝶番軸点を求めることは, 小児においても可能であり, かつ有効であることが認められた. 2. Hellmanのdental stage IIIA〜IIIBの小児の顆頭運動について各計測項目における平均値のデータを求めることができた. 3. 小児のexcursiveな運動は成人よりも浅い角度で滑走していた. 4. Protrusion, mediotrusion時の顆頭の運動距離について小児と成人を比較したところ有意差は認められなかった. Opening時の運動距離は小児のはうが有意に小さかった. 5. Mediotrusion時の顆頭の側方変位量について左右を比較すると, 小児ではMotility, Mobilityともに左右差がみられなかったが, 成人では右側のはうが左側より大きな値を示した. 小児と成人を比較すると, 右側ではMotility, Mobilityともに差が認められなかった. 左側ではMobilityには差が認められなかったが, Motilityは成人のほうが小児より小さな値を示した. これらのデータは小児歯科臨床においてアンテリア-ガイダンスとポステリア-ガイダンスの調和のとれた顎運動を行うことのできる顎顔面系の成長を育成するうえで重要な参考資料になると考えられる.
- 1993-10-25