タンニン・フッ化物合剤を配合したグラスアイオノマーセメントを作用させた象牙質のF, ZnおよびSrの取り込みについて
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概要
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タンニン・フッ化物合剤 (以下HY剤と略す) の組成は, フッ化亜鉛50%, フッ化ストロンチウム25%, タンニン酸20%, pH調節剤 (酸化亜鉛) 5%で, これらが歯質の成分と結合して, 歯質の無機質ばかりでなく有機質をも強化するために開発されたものである. 抗菌性, プラーク抑制および抗酵素性を有し, 無機質の耐溶解性, 石灰化, 象牙細管封鎖, 軟化牙質の再石灰化およびセメントの接着性などを向上させる基礎的効果があるために, 種々の歯科材料に配合されて使用され, う蝕予防, う蝕の進行抑制, 二次う蝕抑制, 根管治療, 歯髄保護および知覚鈍麻などの臨床的効果が認められている. 本研究は, HY剤を各種割合で配合したグラスアイオノマーセメント (以下GIセメントと略す) について. どの配合割合が歯質を強化するのに効果的であるかを知るために, その基礎的研究として, 上述の効果を発揮するF, ZnおよびSrのGIセメント硬化体からの溶出量を測定するとともに, 同GIセメントをウシ象牙質に作用させた場合の各元素の取り込み状況と経時的な変化をWeatherellらのabrasive micro-sampling法を用いて調べた. HY剤を0, 1.5, 5.0および10.0wt%配合したGIセメント (以下HY0, HY1.5, HY5およびHY10と略す) からのF, ZnおよびSrの蒸留水への溶出傾向およびそれらと接するウシ象牙質への層別の取り込み量を調べた結果, 次の特徴が明らかになった. 1. Fは溶出が多量で継続的であった. 一方, ZnおよびSrは初期のboostが顕著であった. 2. HY剤の配合割合が高くなるにつれて, 各元素の溶出量は増加したが, HY10ではとくに多くなっていた. 3. ウシ象牙質への取り込み量は, FとZnが多く, Fでは浸透も深かった. Srは最少でごく表層にのみ確認された. また, 3元素とも配合割合が高いほど初期に取り込まれる量が多かった. 4. Fの取り込み量は配合割合が高いものほど多く, 経時的に増加した. この傾向はFの蒸留水中への溶出傾向とおおむね一致していた. 5. ZnはHY1.5では経時的取り込み量は増加し, 浸透も深くなった. HY5および10では表層部に初期に多量に取り込まれていたのが経時的に減少した. しかし, 浸透は経時的に深くなった. 6. SrはHY1.5および5では経時的にごく表層部で取り込まれ増加した. HY10ではあまり取り込まれなかった. したがって, Fは最も溶出しやすく象牙質に取り込まれやすく, Srは最も溶出しにくく取り込まれにくいことがわかった. また, FおよびZnの取り込みは, HY剤の配合割合が高いほど優れ, Srの取り込みはHY5が優れていた.
- 1992-12-25
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