ネコ歯根膜血流量の非観血的, 連続的測定についての検討
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概要
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歯根膜の血流を非観血的かつ連続的に測定することを目的に, 歯根膜の血流測定にレーザードップラー血流計測法 (以降LDV法と略す.) を応用した. 同時に, 水素クリアランス血流測定法を用いて, 同部位の歯根膜血流を測定し, LDV法による出力値が測定部位の血流を反映していることを確かめた. 実験には成ネコ9匹を用い, 上顎犬歯に窩壁が一層残るまで窩洞を形成し, 歯質を通してレーザー光を歯根膜に照射し, LDV法による血流計測を行った. 同時に水素クリアランス血流計の電極 (φ80μm) を歯根膜内に刺入し, 血流計測を行った. 次に0.001%アドレナリンを粘膜下に注入し, 歯根膜の血流変動を記録した. その結果を以下に示す. 1) LDV法によって, 心拍に同期した振動が記録され, 同時に長い周期をもつ律動的な変動が観察された. 2) 水素クリアランス法によって求めた歯根膜血流の絶対量は, initial slope法で50.2±1.7ml/min/100g, two compartmental analysis法で46.2±2.3ml/min/100g (mean±S. E.) であった. 3) アドレナリンの局所投与により, 血流量の減少が, 水素クリアランス法と, LDV法でともに観察された. 4) 水素クリアランス法とLDV法における歯根膜血流量の変動率は高い相関を示し, LDV法による値が血流の変動を良く反映していることがわかった. 以上のことから, LDV法は水素クリアランス法のように血流の絶対量を計測することはできないが, 歯根膜の血流の変動を連続的に捉え得ることがわかった. それゆえ, LDV法は歯根膜に加えられた矯正力, 薬物などの各種刺激がもたらす歯根膜血液循環の変動を知る有効な手段となることが示唆された.
- 大阪歯科学会の論文
- 1992-12-25