CSCテレスコープクラウンの力学的挙動に関する研究 (大阪歯科大学大学院歯学研究科博士論文内容要旨および論文審査結果要旨)
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概要
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歯周組織の弱体化した残存歯や支台歯を欠損補綴に組み込み, 口腔機能を果たしながらこれらを保護しようとするために, とくにCSCテレスコープクラウン (以下CSCと称す) を応用した補綴修復法が, 臨床において好結果を得ている. しかしながら, この設計, 維持装置の有効性について力学的にその機構を詳細に検討した研究はほとんど見当たらない. 著者は, CSCの荷重下における力学的メカニズムを明らかにするために有限要素法を用いて応力解析を行い, 荷重条件の変化に伴う支台歯および歯周組織の変化について検討した. さらに修復物の歯冠部のみを他種テレスコープクラウンであるコーヌスクローネに置き換えた場合についても同様に解析を試み, CSCとの力学的挙動の違いについて検討を加えた. 実験方法 有限要素解析にあたっては, 解析1として単独歯モデル, 解析2として大臼歯欠損における矢状断面モデル, 解析3として上顎歯を固定連結した前頭断面モデルの3パートに分けて行った. なおモデル作製にあたっては, テレスコープクラウンでは外冠と内冠は非連続体であり接触や分離, 相対的なスライドが生じることから内冠と外冠の接触面には2次元接触要素を導入し, 2次元平面問題として弾性解析を行った. この接触要素は面に垂直な方向の圧縮力のみを伝達し, 接線方向には摩擦なしである. 実験結果 1) 単独歯モデルにおける解析では, 荷重方向によって外冠, 支台歯および歯周組織に生じた変位量および応力は著明に変化し, いずれも水平荷重において最大値を示した. またCSCでは内冠の咬合面側に, コーヌスクローネでは内冠の頬舌側面中央部にそれぞれ応力集中を生じ, 歯根膜および歯槽骨内に発現した応力はCSCの方がわずかに小さいものの大差は認められなかった. 2) <∣67>^^^-欠損に<∣45>^^^-を支台歯とするテレスコープクラウンを応用した矢状断面モデルでは, 垂直荷重を負荷した場合でも荷重部位によっては支台歯に対し側方傾斜荷重が負荷されたような挙動を呈し, とくに支台歯, 人工歯部に荷重が均等に負荷されなかった場合には, 支台歯は傾斜したり義歯床の沈下が著しく支台歯歯根膜や歯槽骨内に発現した応力も大きくなった. また, 支台歯根尖部付近ではCSCの方がコーヌスクローネより相当応力値は増大したものの, 変位状態から考慮してCSCでは垂直成分の方が水平成分より大きく, 支台歯や歯周組織に対してはより好ましい傾向であることが示唆された. 3) 前頭断面モデルにおいて, CSCおよびコーヌスクローネともに両側性荷重時より片側性荷重時の荷重側支台歯, 歯周組織の方が変位量は大きく, しかも荷重側での変位量は総じてCSCの方が小さく, その方向もほぼ根尖方向へ向かうのに対して, コーヌスクローネでは内上方へ変位する傾向があった. さらに, 歯根膜および歯槽骨内各参照エリアでの相当応力値は, 荷重側では総じてCSCの方が小さく, 非荷重側では荷重側に比較してかなり少ないものの, CSCの方が大きくなった. またパラタルバーとの連結部およびバーの中央部での相当応力値はCSCの方が大きくなった. 結論 CSCは支台歯および歯周組織に対する変位, 応力状態さらには力の伝達様相から判断して, 歯周補綴領域において優れた修復処置法であることが確認された.
- 大阪歯科学会の論文
- 1990-06-25
著者
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