α-TCPおよび水酸化カルシウムの根尖周囲組織への影響に関する酵素組織化学的研究 (大阪歯科大学大学院歯学研究科博士論文内容要旨および論文審査結果要旨)
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概要
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近年, 根管充填用シーラーに生物学的特性をもたせようと, 水酸化カルシウム, ハイドロキシアパタイトおよび種々のリン酸カルシウムなどを用いてさまざまな研究が進められている. 本研究では, ハイドロキシアパタイトの前駆体であるα-リン酸三カルシウム (α-TCP) と骨性瘢痕治癒を促進させるといわれる水酸化カルシウム (Ca (OH)_2) をとりあげ, これらの材料を実験動物の抜髄創面に応用し, 被験材との接触面付近における組織の反応を病理組織学的および酵素組織化学的に検索した. 実験材料および方法 体重200gのWistar系雄性ラット120匹の下顎左右側第一臼歯を被験歯として用いた. 被験歯を抜髄後, α-TCP, Ca (OH)_2およびCa (OH)_2を1.5%添加したα-TCPのそれぞれの粉末を滅菌生理食塩水で練和し, 根管内に充塞し髄室を封鎖した. なお, 抜髄後に髄室の封鎖のみを行ったものを対照とした. 術後1週, 2週, 4週, 6週, 8週および10週の各期間経過後に, 実験動物を断頭屠殺し, 下顎骨を摘出して4℃にて0.5M中性EDTA-4Na溶液を用いて脱灰を行った. 脱灰終了後, 摘出下顎骨を水洗し, 凍結させて-20℃のクリオスタット内で20μmの連続切片を作製した. 切片はH-E染色による病理組織学的検索および酵素組織化学的検索に供した. 証明した酵素は, non-specific alkaline phosphatase (ALP), non-specific acid phosphatase (ACP), succinate dehydrogenase (SDH) およびlactate dehydrogenase (LDH) である. 実験結果 1) 対照群 : 2週までは, 抜髄創面付近にALPおよびACPに弱ないし中等度陽性反応を示す肉芽組織が存在し, その肉芽組織は経週的に線維化が著明になって中等度のALP陽性反応とSDHおよびLDHの弱から中等度陽性反応を示した. また, ACPに強陽性反応を示すmacrophage様細胞がわずかに認められた. 2) α-TCP群 : 2週までは被験材との接触面付近に, ACP強陽性反応を示すmacrophage様細胞を含む幼若肉芽組織が認められた. この肉芽組織は経週的に線維化傾向が進み, ALP, SDHおよびLDHの弱ないし中等度陽性反応を示した. 3) Ca (OH)_2群 : 2週までは被験材と接触する付近に炎症性細胞の浸潤と壊死組織が認められた. その周囲の肉芽組織内には, 8週までACPに強陽性反応を示す多数のmacrophage様細胞が認められた. しかし, 4週以降の数例においては根尖孔付近に硬組織様構造物が認められ, その表面はALPに強陽性反応を示した. しかし, 多くは肉芽組織由来の中等度ALP陽性反応を示すのみであった. 4) Ca (OH)_2を1.5%添加したα-TCP群 : 2週までは被験材との接触面直下に壊死組織がわずかに認められ, この周囲にALP弱陽性反応を示す幼若肉芽組織が存在していた. また, 10週を経過しても明瞭な硬組織様構造物は認められないものの, 8週以降, 被験材に近接した肉芽組織に線維化傾向を示す肉芽組織よりも強いALP陽性反応と, macrophage様細胞由来とは考えられないACPの中等度陽性反応が認められた. 結論 以上の結果から, Ca (OH)_2を1.5%添加したα-TCPを根管充填用シーラーとして応用した場合, 根尖部付近の線維化の進んだ肉芽組織にALPの強陽性反応が認められたことから, 将来, 被験材に接して硬組織が形成される徴候がうかがえ, Ca (OH)_2を1.5%添加したα-TCPは臨床的に有効な材料となり得ることが示唆された.
- 大阪歯科学会の論文
- 1990-06-25
著者
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