上顎洞疾患の超音波診断に関する研究 : とくに嚢胞性疾患について
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概要
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上顎洞疾患の超音波診断の有用性について, 臨床例および模型実験により検討を加えた. 対象は正常者21名 (40側), 術後性上顎嚢胞80名 (82側), 歯原性嚢胞20名, 上顎洞炎21名 (22側), 上顎癌1名である. 超音波診断 (Aモード法) にはATMOS社製Sinuscope SIN II-Sを使用した. プローベの直径は13mmで周波数4MHzである. 143名の超音波所見をX線写真所見, 手術所見と比較し, 以下の成績を得た. 1. 正常上顎洞では超音波ビームは洞内の空気によってすべて反射され, 洞内および洞後壁からのエコーは出現せず, 初期エコーのみ現われる (N型). 正常者のN型出現率は82.5% (33/40) で, 17.5% (7/40) がfalse positiveであった. 2. 嚢胞性疾患の典型的な超音波所見は初期エコーと洞後壁エコーとの間に, 嚢胞前壁と嚢胞後壁の2つのエコーが現われる (C型). 1つ, 3つおよび4つのエコーの現われたものを非典型な超音波所見とした. 術後性上顎嚢胞の診断率は断層X線写真所見で92.7% (76/82), 超音波診断で84.1% (69/82) であった. 歯原性嚢胞の診断率は単純X線写真所見30%, オルソパントモグラム95% (19/20), 超音波診断90% (18/20) であった. 3. 上顎洞炎で粘膜肥厚および貯留液が存在する場合には, 初期エコーに続いて後壁エコーが現われる (E型). 粘膜肥厚のみで貯留液が存在しない場合には, 粘膜エコーのみ出現し, 後壁エコーは現われない (M型). 上顎洞炎の診断率は77.3% (17/22) であった. 4. 洞底に僅かな分泌物, あるいは粘膜肥厚があれば後壁エコーが現われる. 嚢胞と前壁の間に含気腔が存在すればN型を示す. 曲面である嚢胞では超音波ビームが入射する角度によって嚢胞エコー, 後壁エコーが現われないことがある. これらがfalse positive, false negativeの一因である.
- 大阪歯科学会の論文
- 1990-04-25
著者
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