天明時代から知られていたという深水の水稲冷害軽減効果 : 「明治三十八年宮城県凶荒誌」上の後藤新四郎の一文について
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概要
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新たな稲作技術は農家の経験的知見が契機となって生み出された例が少なくない.酒井(1949)がイネの障害型冷害を防ぐ危険期の深水灌漑法を理論的に体系化する直接の契機は,'1941年の冷害年に北海道農業試験場美深分場で行われた灌漑水深試験のデータであった.その試験が行われる背景には,風連町の農家が深水灌漑をした直播栽培田で冷害の被害が軽いことに気付いた経験則があったといわれる(川田1976,1981).深水の冷害軽減効果に農家が気付いたという記録は,この昭和初期の農家体験以前のものは見つかっていない(森脇2001,佐々木2003).ところが,1916(大正5)年に宮城県が発行した明治38年大冷害に関する資料集の中に,天明時代に深水の冷害軽減効果に気付き,以後代々遺言として伝えて,冷害年には深水を実践してきたという注目すべき農家の記録があった.そこで,この記録を紹介するとともに,この記録が書かれた背景などについて調査を行ったので,その結果と併せて報告する.
- 2004-12-27
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