華商のネットワーキング活動と華人ネットワーク組織のブリッジ機能 : 華人ビジネス・ネットワークの構築から華人企業のダイナミックな企業展開へ
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概要
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本稿は、華商のネットワーキング活動を通じた華人企業間のネットワーク構築のプロセスと、それを促進する華人ネットワーク組織のブリッジ機能について明らかにする。華人は伝統的に東南アジアでの厳しい社会・経済環境と対峙するため、業縁組織を設立してきた。シンガポール中華総商会(SCCCI)は、華人企業や業種別の華人商工団体を会員に抱えるシンガポール最大の業縁組織である。また、SCCCIの役員は政府、社会団体、商工団体の役員を兼任している。そのため、SCCCIは会員華人企業や業種別の華人商工団体、そして、政府、社会団体、商工団体との間に広範なネットワークを形成している(第一のブリッジ機能)。そして、SCCCI自体も情報提供やセミナーや商談会などの活動を行うことで、華人企業間のネットワーク構築を仕掛けている(第二のブリッジ機能)。他方、華人企業の過半数は華商による所有と経営が行われる家族企業であるため、華人企業の意志決定は華商が握っている。その結果、華人企業間のネットワーク構築は、華商が主体的に行っているのが実態だ。実際、世界華商大会(WCEC)のような企業マッチングの場には華商自ら参加し、多彩で広範な華商同士の面識を作るためアクティブなネットワーキング活動を展開している。また、他の華商や中華総商会役員からの紹介や信用付与を利用して、華商同士の弱い個人間関係を形成している。そして、いったん面識ができれば、華商はその場でフェイス・ツゥー・フェイスの商談を行って、事業へと結び付けようとする。そこでは、(1)共通の言語と文化習慣、(2)華人系商工団体や華商による信用付与、(3)華商と華人企業の信頼度、(4)事業における利害の一致が重要であり、これらの条件が揃った場合に信頼関係に基づく華商同士の強い個人間関係へと強化される。最終的には、商談などを通じて信頼が確認され両者の利害が一致する場合に、華商が華人企業同士を境界連結して強い組織間関係を構築する。さらに、華人文化に根ざした信用保証メカニズムが加わることで、華人企業によるネットワーク志向の経営が生まれるだろう。このようにして構築された華人企業間のビジネス・ネットワークを通じて有益な市場情報が交換されたり、取引や共同事業が行われることで、華人企業の経営ダイナミズムが創出されていると考えられる。
- 国際ビジネス研究学会の論文
- 2004-09-30