日本企業のアジア戦略再考 : アンケート調査にみる日本企業のアジアビジネスの現状と今後の展望
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概要
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日本企業のアジアへの進出は、1990年代半ばまでは順調に拡大してきたものの、97年の通貨危機を境にアジアビジネスを取り巻く環境が激変したことにより見直しを迫られることになった。進出各社はアジア拠点を維持するとともに、販売・調達先の再編など、コスト構造の改善に注力してきた。こうした地道な努力により最悪期から脱した日本企業は、その後アジア戦略を「守り」から「攻め」に転じることになった。一方、通貨危機をチャンスととらえた欧米企業はアジア展開を加速し、プレゼンスを着実に拡大している。また、近年ではアジアの地場企業が台頭しており、アジアビジネスは日系、欧米系、アジア系の三者による「大競争時代」に突入しているといえよう。こうしたなか、日本企業はアジアにおいても新拠点の整備、研究開発の現地化、サプライチェーンの導入や調達先、そして販売先の見直しといった「内部資源活用型」といえる取り組みに着手している。しかし、内部資源活用型の対処法では、扱う製品・サービスなど、すべての市場セグメントやポートフォリオを自前で構築し、運営することを目指すことになり、そのためのコストやリスクは巨大化する。こうしたなか、コストやリスクを低減しながら、提携先と相互に不足する部分を補完したり、双方の強みを一層強化したりすることが可能となる欧米及びアジア企業との戦略提携は、今後重要になる可能性が高い。独自の技術やブランドを確立した欧米企業や、世界的な供給力をもって台頭しつつあるアジア企業と戦略提携をすることにより、アジアのみでなく、世界的な規模での業界勢力の再構築も展望できるようになる。そのためにも、今後はアジア戦略を実行するに当たり、グローバルな視点から課題を見渡し、全体的な最適化を念頭におくことがますます重要になるだろう。
- 国際ビジネス研究学会の論文
- 2004-09-30
著者
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