起業家とベンチャー成長の諸条件

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最近の国際比較調査によると、日本の起業活動は世界37カ国中最低の水準にある。現状を打開するために政府、経済団体も諸施策を講じているが、あまり成果が上がっていない。この論文ではまず、創業後日本経済の発展とともに成長を続け、それぞれの分野で国際企業となったYKK、ミネベア、ベニハナの3社を取り上げ、競争優位を築いたビジネスモデルを明らかにし、創業者のリーダーシップの特徴とプロフェッショナル・マネジャーの活用のしかたについて説明した。分析の焦点は国際的大企業にまで発展したベンチャー成長の後期段階におかれている。次いで、筆者が最近行った流通・サービス業の起業家と専門的経営者の面接調査結果にもとづいて、ベンチャー成長の初期段階に焦点を合わせ、成功する起業家に求められる要件、起業家と専門的経営者の違い、ベンチャー成長過程における両者の関係について説明した。その結果、成功する起業家に求められる最も重要な要件は、高い「志」とそれを実現するための執念または「こだわり」であることがわかった。それに次いで、「時代の変化の中に機会を見出す」能力、「強運」であること、および「良好な人的ネットワーク」が挙げられる。これらの要因、とりわけ最初の「志とこだわり」は生得的なもの、あるいは幼少期の環境に起因するものであるという見方が起業家にも専門的経営者にも強かった。ビジネス・スクールなどで伝授できるのは経営スキルであり、「志」を教えることはできない。わが国の起業活動を活発にするには、幼少時の家庭や学校において、起業家の経済社会的役割が高く評価され、その成功も失敗も肯定的に語り伝えられるかどうかがより重要なのである。
2004-09-30

著者

石田英夫
中村学園大学

起業家とベンチャー成長の諸条件

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