埋葬儀礼の変容 : バリ島, ウォンガユ・グデ村の場合
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概要
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整理し終えた現実を信じたいという誘惑。自分が見聞きしたものなのだから, この誘惑にはやはり素直に従いたいと誰もが思う。だが, 突然「彼等」の側からそうした誘惑が裏切られたとしたら。ここで紹介する埋葬儀礼の変容とは, そうした裏切りをへて見出された儀礼の構造的転換である。回顧によって浮かび上がる彼等の歴史認識を通じて, いったん共時的に整理された儀礼範畴間の差異は, 歴史的な構造的変化へと読みなおさざるをえなくなったのである。具体的に言えば, 儀礼の意味論は変化していないのに, 儀礼の規模, 宇宙論的広がり, 経済的側面, 組織論, 名誉をめぐる社会学的背景といった点が転換しているのであった。しかもこの転換は, 村落を超えたシステム(国家, 世界経済)の影響から起こった, 1960年代の村落社会をめぐる大規模な地殻変動の一角にすぎないのである。不可視のシステムを目に見える文化とともに捉えること, それが今後の課題となるだろう。
- 日本文化人類学会の論文
- 1988-12-30
著者
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