「神経性食欲不振症外来患者にみられる医学的所見について」Miller KK,Grinspoon SK,Ciampa J,et al : Medical findings in outpatients with anorexia nervosa. Arch Intern Med 165:561-566,2005
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概要
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背景:大学生女性の約0.5〜1%が神経性食欲不振症に罹患しているといわれており, またその多くは地域にて通常の生活を営んでいると考えられる. しかしながら, 神経性食欲不振症に罹患している地域住民女性の臨床的データに関してはほとんど調査されていない. 方法:DSM-IVによって診断された214名(17〜45歳)の神経性食欲不振症患者に対して横断的な地域ベースの調査として, インタビュー, 身体学的診察, 採血, DXA法による骨密度測定が行われた. 結果:約半数の患者に入院歴がみられた. Purging行為を認める患者では罹病期間が有意に長かった. 75%が平均5.9時間/週の運動を行っていた. 74%がエストロゲン製剤を使用したことがあり, 30%が使用時に月経が再開していた. 73%に抗うつ薬の内服歴を認め, 47%は内服中であった. 平均心拍数は61.6拍/分であり, そのうち43%に除脈を認めた. 平均収縮期血圧は100.1mmHgであり, そのうち, 15%が90mmHg以下であった. 平均体温は36.6度であり, 22%が36度以下であった. 各所見は, 体重減少, 骨密度, 体脂肪率, 罹病期間, 運動時間と相関していた. 39%に貧血(94%が小球性)が, 34%に白血球数の減少が, 5%に血小板数の減少がみられた. 7%に低Na血症が認められた. 20%に低K血症が認められ, そのうちの48%に定期的なpurging行為が認められた. 2%で不整脈の既往を認め, 多くは低K血症が原因と考えられた. 6%に低Ca血症がみられた. 12%の患者でトランスアミラーゼが上昇していた. 各検査所見は体重減少, 骨密度, 体脂肪率, 罹病期間, 運動時間と相関していた. 最終月経からの期間は平均27.1ヵ月であった. 月経開始年齢の平均は13.6歳であり, 69%に開始年齢に遅れがみられた. 52%に骨塩量の低下がみられ, 34%に骨粗鬆症が認められた. 骨密度はBMIと%理想体重に強い相関を示していた. 30%の患者に骨折の既往が認められた. そのうちの42%が非外傷性であった. コメント:神経性食欲不振症患者では, 低栄養状態に伴うさまざまな合併症の存在が知られており, 同年齢女性の12倍の死亡率であるとも報告されている. 一方, 外来診察でみられる医学的所見に関して報告した文献は多くない. 本文献では多くの医学的所見が神経性食欲不振症を有する地域住民女性に認められたことが報告されている. その結果から, 神経食欲不振症の患者は定期的に身体的な診察と検査による評価を行い, 注意深くフォローされるべきであると著者らは述べている. 本文献は, 神経性食欲不振症に罹患した地域女性にみられる一般的医学的所見についての報告であり, 神経性食欲不振症患者の外来診療において参考になるものである.
- 2005-06-01
著者
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