「老年期のうつとアテローム硬化との関係(ロッテルダムスタディ)」Tiemeier H, van Dijck W, Hofman A, et al: Relationship between atherosclerosis and late-life depression:The Rotterdam study. Arch Gen Psychiatry 61:369-376, 2004
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概要
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無症候性脳梗塞は老年期うつ病の発病に関与し,うつ状態についての前向き研究ではうつ状態が心筋梗塞の危険性を増加させた.しかし,うつと心筋梗塞の間にみられた関係を説明する病態生理学的メカニズムは不明のままであった.そこで,大規模な前向き研究で地域をベースにしたロッテルダムスタディで,身体各所のアテローム硬化とうつとの関係を調べた.ロッテルダムスタディとは,慢性で機能障害をもつ疾患の決定因子を調査することを目的とした調査で,本研究はその第2次追跡調査(1997〜1999年)の一部として行われた.60歳以上の4,019人の男性と女性の参加者について,頸動脈の内膜-中膜厚,頸動脈の凝血塊,くるぶし-上腕血圧指標と大動脈アテローム硬化を測定し評価した.冠動脈のアテローム硬化の評価は,これらの冠動脈以外のアテローム硬化の測定値を計算することによって3,747人より得られた.さらに1,986人のサブグループで,冠動脈の石灰化も測定した.また,すべての被検者は2つのステップによって精神症状の評価を受けた.まずはじめに精神症状の自己申告性評価尺度であるCenter for Epidemiological Studies Depression Scale(CES-D)を4,019人全員に施行した.このCES-D陽性の被検者285人(7.1%)が,うつ病性疾患の可能性がある対象者として専門家の診察を受け,119人がうつ病性障害,118人がうつ病性障害の診断基準を満たさない閾値以下の抑うつ性症候(subthreshold depressive symptoms)を有する者と診断された.結果はうつ病性障害では重度な冠動脈石灰化像を示すものが有意に多かった.また,冠動脈以外の重度のアテローム硬化は,うつ病性障害とより高い相関があった.さらに,うつ病性障害と冠動脈と大動脈の高度な石灰化の間に高い相関があった.今回の結果は,血管性うつ病という考えが成り立つことを支持するものであり,うつの発症に血管因子が関与することを示唆するものである.また同時に,うつはアテローム硬化進展の危険因子であるとも考えられた.本研究からはアテローム硬化の原因を確定することはできないが,全身性アテローム硬化の進行過程が老年期うつを伴い,アテローム硬化とうつが相互に関与しあうことが推測された.
- 2005-04-01
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