介護保険の「自立支援」 : 痴呆老人の場合
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概要
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わが国の介護保険では、「自立」という言葉が、第一に、支援を要しない自立、第二に、支援を要する自立の意味で用いられている。介護保険がめざす「自立支援」の「自立」は、もちろん第二の意味の「自立」であるが、この「自立」はさらに、「残存能力の活用」と「自己決定」とに解釈が分かれている。自立を自己決定と解する立場からは、決定の自立こそが重要であり、決定さえ自立しておれば、たとえその決定の実行が他者に依存する場合でも、その要介護者は自立しているとみなされる。しかし、ここで問題になるのが、決定能力が不足している痴呆老人の場合である。痴呆老人には、厳密な意味での決定能力はないかもしれないが、それでも何らかの選好をもつ能力が残存しているなら、それをも広く決定能力と解することで、自立の余地を認めることができる。と同時に、介護保険にいう「自立」を残存能力の活用の意味に統合することができるのである。
- 尾道大学の論文