脳死の倫理に関する一考察医師,家族,社会のための倫理的指針を求めて
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概要
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医学の進歩によって過去にはなかった倫理的諸問題が生じて来た. 生命維持装置の発達は, 死の判定と脳死患者の処置についての論争をまきおこしている. この問題について米国内の多くの委員会が見解を発表しているが, 一般世論を等しく納得させるには至っていない. 臓器移植の普及はこの論争に新たな火種を投じた. 大衆の意見の両極端として「生きる権利」を守る運動と「死ぬ権利」を守る運動とが対立しており, いずれにも一利一害がある. 著者の見解では, 脳死においては個人の生の本質的部分がすでに失われており, その臨終を妨げないことは倫理に反しない. 一方, 自発呼吸を有する植物状態の生はあくまで援助すべきである. 地球上で基本的生存すら脅かされている多くの人々がいるというのに, 豊かな国々で脳死体の維持に莫大な浪費を行っているのは如何なものだろうか.(1984年11月14日 産業医科大学教員研究会における講演内容にもとづく.)
- 1985-06-01